2008 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスを用いたヘリコバクター・ピロリCagAによる胃粘膜破壊機構の解明
Project/Area Number |
19390122
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畠山 昌則 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40189551)
|
Keywords | 上皮細胞極性 / タイトジャンクション / 質量分析 / PAR1b / MARK2 / ヘリコバクター・ピロリ / CagA / 二量体化 |
Research Abstract |
昨年度の研究から、ピロリ菌病原因子CagAは、極性制御のマスターレギュレーターとして知られるPAR1b/MARK2セリン・スレオニンキナーゼと複合体を形成し、そのキナーゼ活性を抑制する結果、極性化上皮細胞のタイトジャンクションならびに頂端側-基底側極性を崩壊させることが明らかになった。PAR1bとの結合には、CagAのEPIYA領域内に存在する16個のアミノ酸からなるCM配列が関与する。このCM配列は東アジア型CagA分子ならびに欧米型CagA分子間でアミノ酸配列が一部異なる。この差異を反映し、東アジア型CagAは欧米型CagAに比べてより強くPAR1bと結合することが明らかとなった。しかしながら、東アジア型CagAはCM配列を1個しか保有しないのに対し、欧米型CagAは分子内に複数個(通常2個)のCM配列を保有するため、CagA分子全体としてのPAR1b結合能は東アジア型ならびに欧米型CagA問でほぼ同程度の強さを有することが示された。データベース解析から、南アメリカで単離される一部のピロリ菌が保有する欧米型CagAは東アジア型のCM配列を有することが判明し、CagAの分子進化を考える上で興味深い。一方、CagAのCM配列はPAR1bのキナーゼドメイン内27アミノ酸と特異的に結合する。CagA結合に用いられるこのPAR1bも配列は、ヒト細に存在する他のPAR1キナーゼファミリ一分子(PAR1a/MARK3, PARc/MARK1, PAR1d/MARK4)においてもよく保存されており、in vitroタンパク結合試験から、CagAはPAR1b>PAR1d>8AR1a>PAR1の強さの順に結合することが明らかとなった。以上の結果より、CagAはPAR1キナーゼのユニバーサルインヒビターとして働き、上皮細胞極性の破壊・粘膜構築の崩壊を誘導する分子として機能することが示された。
|