2008 Fiscal Year Annual Research Report
レセプターシグナル伝達系の再構築によるB細胞増殖・分化制御
Project/Area Number |
19390141
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
北村 大介 Tokyo University of Science, 生命科学研究所, 教授 (70204914)
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Keywords | シグナル伝達 / 細胞増殖 / B細胞分化 / Bリンパ球 / 免疫学 / 抗原受容体 / プレB細胞レセプター |
Research Abstract |
B細胞分化を誘導・制御する抗原受容体(pre-BCR・BCR)からのシグナルは細胞の分化・増殖に伴う様々なイベントを引き起こす。そのために多数の異なるシグナル経路が存在すると考えるよりも、分化過程あるいは活性化に伴って限られた数の構成因子が再構成することによってシグナル伝達経路が順次再構築されると考えた方が理解しやすい。この仮説を検証し、レセプターシグナルによる細胞分化制御の本質を理解することが本研究の目的である。まず、プレB細胞増殖・分化を制御するpre-BCRシグナルに注目し、BLNK欠損マウス由来のプレB白血病細胞株(BKO)を用いた。BKO細胞にBLNKを導入するとL鎖遺伝子再構成・pre-BCR発現低下といった分化と増殖停止が起こる。BKO細胞の増殖には自ら発現するIL-7によるJak3-STAT5経路の活性化とそれによるp27kip1の発現抑制が必要であった。BLNKはチロシン96を介してJak3と直接結合し、その活性を抑制した。BLNK欠損マウスではプレB細胞の増殖が抑制されていることを考えると、BLNKはpre-BCR発現直後には増殖促進のシグナルを伝えるが、その後pre-BCRのエンドサイトーシスによりIg-α/βから遊離したBLNKはIL-7Rのもとに移行しJak3を抑制し、細胞増殖を止めて小型プレB細胞への分化を促すと考えられた。骨髄内にはpre-BCRに結合し、そのエンドサイトーシスを遅延させる何らかのリガンドが存在すると思われるが、その同定には至っていない。また、BKO細胞内でBLNK-ERをタモキシフェンにより活性化させた場合、pre-BCR発現低下と分化は起こるが増殖停止は起こらないことから、両者にはBLNKの異なるドメインが働くと思われる。一方、BLNKによる分化誘導にはPKCηの膜移行およびIRF-4の発現誘導が必要であることが明らかになった。さらに、H-Rasと結合するBLNK内のドメインを同定し、この結合がBCR架橋によるErkの活性化に必要であることを見出した。以上より、BLNKは複数のドメインを使って、pre-BCR/BCRシグナル再構築に重要な働きをしていると思われる。
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