Research Abstract |
1. 成人T細胞白血病(ATL)細胞特異的な抗腫瘍効果を有するテトラヒドロテトラメチルナフタレン誘導体のTMNAAについて,その作用機序に関する解析を行ったところ,TMNAAはATL患者由来の白血病細胞株であるS1T細胞において,G_2/M期に関与する遺伝子の発現を抑制し,G_2/M期において細胞周期を停止させることが分かった。 2. ジャマイカのシソ科薬草メタノール粗抽出物より,強力な抗腫瘍活性(S1T細胞増殖抑制効果)を見いだした。そこから抗腫瘍成分を分離精製し,その構造を解析した結果,β-peltatinを同定した。 3. ATL細胞株(S1T細胞)と非ATL細胞株(MOLT-4細胞)の糖転移酵素遺伝子の発現解析と質量分析法による網羅的糖鎖解析を行い,S1T細胞特異的糖鎖の存在を確認した。次に,新規開発したリンカーを用いて,S1T細胞とMOLT-4細胞,そしてヒト末梢血単核球細胞(PBMC)の膜画分の糖鎖をそれぞれ固定化したシュガーチップを作製した。M13由来ヒトscFv合成ライブラリーから,これらチップに結合する結合ファージをスクリーニングし,S1T細胞に対しては3種類,MOLT-4細胞に対しては4種類のファージを得ることに成功した。さらに,各ファージの交差結合性をシュガーチップで調べ,結合がそれぞれの細胞糖鎖に特異的であることを確認した。 4. ATL細胞表層の糖鎖に特異的な抗体の取得を目指し,新規の合成ヒト抗体ライブラリーを構築し,その評価を行った。このとき,自然抗体ライブラリーでは糖鎖に対する高親和性抗体は得られにくく,この問題を克服するため,抗体の相補性決定領域(CDR)に人工的な変異を導入したscFvライブラリーを構築することに成功した。
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