Research Abstract |
本研究では,ディーゼル排気中ナノ粒子(DEP; diesel exhausted particle)曝露を行ったマウスを用い,嗅覚系ニューロンを介在した大脳辺縁系への曝露経路を形態的に解明することを目的とし,実験を行った。Oberdorsterらは,Mnナノ粒子(直径30nm)をラットに曝露し,曝露群の嗅球で,約2.5倍のMnが増加していることを確認している。さらに,右の鼻を覆って曝露したところ,右の嗅球では対照群と同じレベルであったが,左の嗅球では両鼻曝露時と同量の値の増加を確認した。しかし,彼らの研究は,神経を介した曝露経路を,直接的に観察している訳ではない。 測定は,高輝度光科学研究センターの放射光施設SPring-8,L37XUに設置した「シンクロトロン放射光励起蛍光X線分析」装置を利用した。マウス(BALB/c,male,8weeks)を用いた曝露実験は,独立行政法人国立環境研究所にて行った。頭部を未固定のまま液体窒素にて凍結し,OCTにて形成した。骨組織を含め,これをクライオスタットにて,切出(5〓厚)した。嗅上皮,嗅球において,各種金属(Ca, Cu, Fe, Ni, Zn)の蛍光X線マッピングをおこなった。 対象5元素中,曝露群の嗅上皮,嗅球においてFe, Ni, Znの値が,神経の存在する組織層で高い値を示した。嗅上皮において,Zn, Cuの値が神経の存在する結合組織で,対照群と比較すると高い値を示した。曝露群の嗅覚神経層で,スボット的に高い値を示している箇所があるが,Caにおいても高値を示しているので,骨組織であると考えられた。一方で,嗅覚神経の表層と,神経束のある結合組織で,対照群と比較すると高い値を示しており,粒子の侵入がある可能性が高い。
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