2007 Fiscal Year Annual Research Report
石綿工場労働者のコホート研究:石綿の種別、サイズ分布及び曝露繊維数に注目して
Project/Area Number |
19390167
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
矢野 栄二 Teikyo University, 医学部, 教授 (50114690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神山 宣彦 東洋大学, 経済学部, 教授 (80133643)
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Keywords | 石綿 / クリソタイル / アンフィボール / 曝露評価 / 量反応関係 / コホート研究 / 患者対照研究 / 発がん |
Research Abstract |
石綿の発がん性は吸入した一定サイズ範囲の石綿繊維数に依存し、繊維等の総重量濃度には依存しないということは今日専門家の共通認識であるが、従来の疫学調査では、石綿の曝露評価は作業環境中の粉塵濃度を石綿繊維数濃度に換算するという方法によって定めており、作業環境ごとの粉塵重量と石綿繊維数との関係の違いが考慮されていない。従って石綿曝露量と発がんの量反応関係の知見はきわめて不十分である。そこで、約35年間の追跡観察を続けている中国の石綿工場で工程別に作業環境中の石綿繊椎濃度を、クリソタイルに対するトレモライト混入比率を確認しつつ直接計測し、曝露評価を行うとともに、作業者の死亡原因追跡による影響評価結果と対応させ、石綿による原因別過剰死亡の量反応関係を提示するのが本研究の目的である。まず工場の工程ごとに採取してきた作業場と個人サンプラーにより採取した標本について位相差顕微鏡およびX線回折による分析を行ったところ、粉塵重量と繊維数とは工程により最大100倍の差があることが示された。これをさらに石綿の種別を考慮しつつ詳細に分析するため、電子顕微鏡による解析を進めているところである。一方死亡については、作業者約2000人のコホートで石綿作業の工程別に肺癌、全がん、全死亡についての情報を集めた。これを曝露程度を工程により3群に分け、男性労働者と女性労働者それぞれの1972年に始まる固定コホート、および男女のダイナミックコホートについて、死亡データを解析した。その結果、30年間観察のコホート内患者対照研究では高曝露群の低曝露群に対する肺がんのオッズ比(95%信頼区間)は4.1(2.7-6.3)であった。一方男性固定コホートの34年間の追跡での高曝露群のCox-比例ハザード比(95%信頼区間)は肺がんは3,9(1.8-8.5)、全がんは2.0(1.2-3.3)、全死亡は1.5(1.1-2.0),であり、年齢分布や喫煙の有無で補正しても結果の変動は少なかった。
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Research Products
(4 results)