2009 Fiscal Year Annual Research Report
石綿工場労働者のコホート研究:石綿の種別、サイズ分布及び曝露繊維数に注目して
Project/Area Number |
19390167
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
矢野 栄二 Teikyo University, 医学部, 教授 (50114690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神山 宣彦 東洋大学, 経済学部, 教授 (80133643)
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Keywords | 石綿 / クリソタイル / アンフィボール / 曝露評価 / 量反応関係 / コホート研究 / 患者対照研究 / 発がん |
Research Abstract |
計画最終年度である本年度は主に、研究成果のまとめと発表を行った。 まずこれまで調査を行ってきた中国重慶石綿工場の非常に若年で発症した胸膜悪性中皮腫症例について、その病理学的診断確定と肺内石綿繊維種別について論文化し発表した。この中で特に工場内での使用や実際採取分析した作業環境中の石綿がほとんどクリソタイルであるのに対し、肺内ではほとんどがトレモライトであるという繊維種別逆転のメカニズムを考察した。すなわち繊維径が違い浮遊性に差があるための環境中での選別と、繊維形態の差による気道通過における選別、クリソタイルが溶けやすい性質を持つための肺内クリアランスでの選別、病理試料となってからのホルマリンによる溶出による選別の4つの可能性について論じた。 また中国の工場作業環境管理の問題を整理し、作業場の整理・清掃などの管理、機械設備の設置、それらの適正な運用、労働者教育、工場敷地内の労働者住宅などの問題を分析し、同工場における高濃度石綿曝露の原因をまとめた。その結果は石綿研究者が多く集まる国際会議(イタリア)で発表した。なお工場内で採取してきた標本の電子顕微鏡による分析は実際に装置を扱う研究協力者の異動による遅れのため、まだ終了しておらず引き続き実施中である。 疫学研究としては2001年末までに発見されたコホート内の41人の男性肺がん症例に対して年齢(±5y)をマッチさせた各5人の対照を選び、コホート内症例対照研究を行った。喫煙、初回曝露年齢、曝露期間を交絡因子として調整した条件付きロジスティック回帰分析の結果、石綿高曝露群の低曝露群に対する肺がんのオッズ比は3.66(95%信頼区間1.61-8.29)であった。喫煙も肺がんに関係しており、喫煙と石綿曝露に相乗効果が認められた。この結果は現在投稿中であるが、さらにコホートの観察を続け、観察期間を延ばしたコホート研究の解析を行っている。
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Research Products
(3 results)