Research Abstract |
マウスおよびヒト肺組織より,肺構成細胞を全てsingle cellとして分離する技術を確立した.この細胞群から,まず血球計マーカーであるCD45でnegative selectionをかけ,次に種々の幹細胞マーカー(CD34, Sca-1, c-kit)陽性細胞群を分離し培養した.その結果,それぞれの幹細胞マーカー発現の違いにより,その後の分化能力が異なることが明らかとなった.これらの細胞を様々な培養条件で培養し,マウスにおいては肺組織幹細胞のcell line化が完了した.このことにより,研究用にいつでも十分な量の幹細胞供給が出来るようになった.この細胞は,いわゆる間葉系幹細胞とは異なり,肺胞上皮細胞にcommitしている新規の細胞群である.現在,この細胞の分化実験を行っている.また,マウス肺傷害モデルを用いて,この細胞が細胞治療として使用可能か検討を進めている.以上のcell line樹立により,種々の肺疾患モデルおよびその肺組織修復過程における肺組織幹細胞の役割を解明する道が開かれたと考える.今後,この肺組織幹細胞が分化する過程における遺伝子群の変化を,研究分担者加藤の持つES細胞分化過程での遺伝子発現データベースと比較検討する予定である.また,ヒト肺由来の肺組織幹細胞cell line樹立を進めている.マウスと異なり,ヒト肺の場合はコロニーを形成する幹細胞を分離培養することは出来るが,cell line化は困難である.これが,種の違いか,または肺組織幹細胞の老化の影響か,検討を進めている.これらの結果より,細胞から見た呼吸器疾患の理解が深まるものと考える.
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