2007 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析によるネフローゼ症候群の病因・病態の解明
Project/Area Number |
19390281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 隆 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 教授 (70151256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 孝司 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50255402)
張田 豊 東京大学, 医科学研究所, 助教 (10451866)
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Keywords | プロテオーム / ネフローゼ症候群 / 細胞内情報伝達 / ネフリン / ポドサイト |
Research Abstract |
1)neph1細胞内領域でのリン酸化の解析 in vitroでNeph1にFyn(Src family kinase)を添加し,抗リン酸化チロシン抗体で染色するとFyn存在下でのみNeph1のリン酸化を観察した。リン酸化されたNeph1の細胞内領域をトリプシンで消化し, MALDI-TOF質量分析装置およびLC-MS/MS法にを用いて解析し,Fynによりリン酸化されるNeph1のチロシン残基(Y604,Y637,Y638,Y654およびY657)を同定した。 2)Neph1後のシグナル伝達の解析 in vitroにおいてリン酸化Neph1にラット糸球体蛋自を添加し,リン酸化Neph1に特異的に結合する蛋自の同定を試みた。Grb2およびCskのがリン酸化Neph1に特異的な結合をした。一方,スリット膜蛋白として重要なnephrinにはリン酸化の有無にかかわらずGrb2の結合を認めなかった。さらに,Fynでリン酸化を受ける4つのチロシン残基のそれぞれをフェニルァラニンに置換した変異体を用いてNeph1のどのチロシン残基のリン酸化がGrb2との結合に重要かを解析し,Neph1とGrb2の結合はY637およびY638のリン酸化を介していることを明らかにした。 3)ネフロ-ゼ発症モデル動物におけるNeph1リン酸化の意義の解析 ネフローゼ発症モデル動物(PAN腎症およびプロタミン硫酸腎症)におけるNeph1リン酸化について解析した。ラットへのプロタミン硫酸の投与ではNeph1の蛋白量は変わらないが,Neph1が著明にリン酸化を受けることを明らかにした。さらにプロタミン硫酸投与によりY637のチロシン残基がりン酸化を受けることも判明した。さらに,PAN腎症モデルでも蛋白尿発症時期に一致してY637のチロシン残基がリン酸化されることを明らかにした。 今回の研究は,スリット膜分子の構造異常ではなく,シグナル伝達機構の破綻がネフローゼ発症の病態を説明しうる可能性を示唆するものである。来年度は,ヒト腎生検検体を用い,実験動物で確認したスリット膜関連分子のシグナル伝達の変化がヒト蛋白尿発症期にも生じているかを明らかにする。また,上皮細胞関連分子のリン酸化とその下流にある関連分子の病態での変化についての解析をさらに進める予定である。
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