2007 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内カルシウムシグナル伝達による心臓発生の領域別制御とその分子機構の解明
Project/Area Number |
19390288
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山岸 敬幸 Keio University, 医学部, 講師 (40255500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 敬子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (50286522)
山岸 千尋 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (10296618)
牧野 伸司 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20306707)
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Keywords | 形態形成 / 細胞分化 / 分子生物学 / 発生医学 / 疾患モデル動物 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
イノシトール三リン酸受容体(IP_3R)は、細胞内の(筋)小胞体や核膜上に存在するCa^<2+>放出チャネルであり、様々な細胞外刺激を細胞内Ca^<2+>シグナルに変換する中心的分子の一つである。3種のサブタイプ(1型、2型、3型)が機能を分担または相補し、複雑な細胞内Ca^<2+>シグナルを制御すると考えられる。 今年度は、マウス心臓発生における1型、2型IP_3Rの機能解析を中心に成果を得た。1型、2型IP_3Rを同時に欠損したダブルノックアウトマウス(以下、DKO)では、胎生9.5日頃より心内膜床の形成異常、胎生10.5日頃より心室壁の菲薄化が認められ、胎生致死となる。胎生9.5日頃の房室管部の解析では、心ゼリーを形成する細胞外基質は正常だったが、心内膜床形成に関与する間葉細胞の減少が認められた。マウス房室管部を組織培養し、上皮-間葉細胞転膜(以下、EMT)について観察したところ、EMTがIP_3R阻害剤によって抑制されることが判明した。分子マーカーを用いた検討では、心内膜細胞に発現するNFATclの核内への移行が、DKOの房室管部において、野生型に比して抑制されていた。ゼブラフィッシュを用いた検討では、心臓発生期の胚にIP_3R抑制剤を投与すると、カルシニューリン抑制剤を投与した胚およびDKOと同様に、心内膜床形成におけるEMTが障害され、房室弁異常が発症した。一方、胎生9.5日のDKOの心室ではTUNEL陽性細胞の増加はみられなかったが、BrdUおよびphospho-histone H_3陽性細胞は有意に減少しており、DKOの心室壁菲薄化は細胞増殖の低下に起因すると考えられた。以上より、1、2型IP_3Rは心内膜床形成領域において、カルシニューリン/NFATc系の上流のCa^<2+>シグナル調節因子として、また、心室領域において細胞増殖を制御するCa^<2+>シグナル伝達系として、相補的に機能することが示唆された。
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