2007 Fiscal Year Annual Research Report
包括的分子遺伝学的解析による気分調整薬奏効機序の同定
Project/Area Number |
19390300
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富田 博秋 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90295064)
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Keywords | 精神薬理学 / ゲノム創薬 / 気分安定薬 / 遺伝子発現 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
現在、双極性障害の治療に使用される気分調整薬の奏功機序には不明な点が多く、また、これらの薬剤が有効でない症例も多いことから奏効機序の解明とその知見に基づくより有効な薬剤の開発が待たれる。これまでに奏功機序に関わる分子として複数の候補が提唱されているが、各候補分子がどのように奏功機序に関わっているのか、気分調整薬の奏効機序に関わるはずの多数の分子群の中でどの程度の重要性を担っているのかは不明で、また、より重要な分子が見逃されてきている可能性もある。今後マイクロアレイを始めとする包括的な分子遺伝学的な研究が進むことで、より重要で治療法開発に有効な分子が同定されることが期待される。そこで、平成19年度は双極性気分障害に対する気分調整薬であるリチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリジンが共通してヒト脳内で及ぼす分子遺伝学的変化を細胞種毎に特定する目的で、ヒト神経細胞由来、アストロサイト由来、オリゴデンドロサイト由来の培養細胞に4剤を各々投与し、発現プロファイルに及ぼす影響を解析した。平成19度研究の結果、気分調整薬により誘導される遺伝子は細胞種毎に大きく異なり、細胞種間のオーバーラップはほとんどないことが示された。また、神経細胞、アストロサイト由来細胞では細胞の生存に関わる遺伝子、オリゴデンドロサイト由来細胞では細胞骨格に関わる遺伝子が、気分調整薬により顕著に発現調節を受ける遺伝子として特定された。更に、次年度に予定している気分調整薬治療歴のある双極性気分障害罹患者からのリンパ芽球への気分調整薬投与により誘導される遺伝子発現変化を解析し、気分調整薬治療に対する有効者群と無効者群の間の差を検討する研究の結果と併せて、気分調整薬の奏効機序に重要な役割を持つ分子群の特定を進める。
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Research Products
(3 results)