2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19390301
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 謙二 Chiba University, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (10189483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊豫 雅臣 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (50191903)
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Keywords | NMDA受容体 / 統合失調症 / グリシントランスポーター / グリア細胞 / 動物モデル / 認知機能障害 |
Research Abstract |
NMDA受容体を介するグルタミン酸神経伝達の異常は,統合失調症などの精神疾患の病態に関与していることが示唆されている。このようなことよりNMDA受容体拮抗薬フェンサイクリジン(PCP)は,統合失調症の動物モデルとして頻繁に使用されている。我々はPCPの繰り返し投与によって引き起こされる認知機能障害のモデルにおいて,非定型抗精神病薬クロザピンは改善作用を示すが,定型抗精神病薬ハロペリドールには改善作用が無いことを見出した。以上のことより,PCP誘発認知機能障害モデルは新規非定型抗精神病薬の開発に有用であると思われる。 NMDA受容体のグリシン調節部位の内在性リガンドであるグリシンは,NMDA受容体の近傍に存在するグリシントランスポーター(GlyT-1)によってグリア細胞に取り込まれる。今回,PCP誘発認知機能障害モデルにおけるGlyT-1阻害薬の効果を調べたところ,有意に改善することが判った。またPCP投与によって,マウス海馬におけるGlyT-1が有意に増加していること。さらに細胞外グリシン濃度が有意に減少していることが判明した。これらの結果はGlyT-1の増加はNMDA受容体の機能低下を引き起こすことから,GlyT-1過剰発現マウスは統合失調症の動物モデルとして有用である可能性が示唆された。さらに,ラットにおいても,NMDA受容体拮抗薬MK-801の投与によって引き起こされる認知機能障害モデルにおいても,GlyT-1阻害薬は改善作用を有することが判った。 以上の結果より,GlyT-1阻害薬は統合失調症の新しい治療薬として有用である可能性が示唆された。
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