2008 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸伝達調節による難治性統合失調症状の新規治療法開発に関する研究
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19390302
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西川 徹 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00198441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
車誰 暁生 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (00251504)
山本 直樹 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70312296)
大島 一成 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (60345288)
西多 昌規 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (10424029)
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Keywords | 統合失調症 / グルタミン酸伝達機構 / D-セリン / NMDA受容体 / 抗精神病薬抵抗性症状 / D-サイクロセリン / グリア / ニューロン |
Research Abstract |
本研究では、フェンサイクリジンなどのNMDA型グルタミン酸受容体遮断薬が惹起する統合失調症様状態において、抗精神病薬反応性の陽性症状とともに難治性の陰性症状や認知障害と酷似した異常が見られる現象にもとづき、NMDA受容体機能を促進することにより双方の症状を改善する次世代の治療法開発をめざす。このため、グリシン調節部位の刺激を介して本受容体の機能を増強する既存薬物である、D-サイクロセリン(DCS)の臨床応用の改良と、新規薬物開発のための標的分子を見出すことを目的としている。そこで、脳の内在性D-セリンが、NMDA受容体のコアゴニストとして重要な役割を果たしていることから、その代謝・機能の分子機構を明らかにし、NMDA受容体機能促進薬の標的としての意義やD-サイクロセリンとの相互作用を検討する。抗精神病薬を服用中の統合失調症患者にDCSを二重盲検法で投与する臨床試験も行う。 キノリン酸によってニューロンの細胞体を選択的に破壊したラット内側前頭葉皮質において、D-セリン(-34%)とともにグルタミン酸(-58%)、GABA(-78%)等の神経伝達物質アミノ酸の濃度が著明に低下した。線条体では、グルタミン酸が減少したのに対し(-11%)、D-セリンとGABAの濃度には変化がなかった。グリア選択的毒素のα-アミノアジピン酸を注入した内側前頭葉皮質においても、D-セリン濃度が対照群の85%に減少した。以上の結果は、脳の内在性D-セリンが、ニューロンとグリアの双方に含まれていることを示しており、D-セリンがグリアーシナプス相互作用において重要な役割を果たす可能性を支持している。また、D-セリンはグルタミン酸とは異なり皮質-線条体投射路には含有されていないことが示唆された。前年度に続いて、D-serine modulator-1の遺伝子改変マウスの作出とDCSの臨床試験を進めた。
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