2008 Fiscal Year Annual Research Report
テロメラーゼ依存性ウイルス製剤の悪性中皮腫の分子病態に基づく診断・治療への応用
Project/Area Number |
19390365
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤原 俊義 Okayama University, 医学部・歯学部附属病院, 准教授 (00304303)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 俊輔 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (00362971)
|
Keywords | テロメラーゼ / アデノウイルス / hTERT / ウイルス療法 / 遺伝子治療 / 悪性胸膜中皮腫 |
Research Abstract |
胸膜中皮腫に対する局所療法としては胸膜肺全摘術が試みられているが、手術不能例や再発症例では予後不良である。米国では、90年代に非増殖型ウイルスベクターの胸腔内投与による自殺遺伝子治療の臨床試験が行われたが、効果は期待されたほどではなかった。岡山大学で開発した国産のウイルス製剤テロメライシン(Telomelysin、開発コード:OBP-301)は、テロメラーゼ構成分子であるhTERT (human telomerase reverse transcriptase)遺伝子のプロモーターでアデノウイルスの増殖に必須のEl遺伝子を駆動することで作成した腫瘍融解ウイルスである。テロメライシンは、広範な癌細胞で選択的に増殖し、高率に細胞融解を引き起す。またわれわれは、テロメライシンにGFP (Green Fluorescent Protein)遺伝子を組み込んだテロメスキャン(TelomeScan、 OBP-401)により肺癌の微小転移検出が可能であることを明らかにしている。昨年度に実施したヒト悪性中皮種細胞に対するin vitroにおけるテロメライシンの抗腫瘍効果、および同所性胸膜中皮腫モデルにおけるテロメスキャンの高い感染効率に基づき、本年度はテロメライシンのin vivoにおける抗腫瘍活性について検討した。H2452細胞をヌードマウスの胸腔内に投与すると多数の胸腔内結節が形成され、ヒト悪性胸膜中皮腫と臨床的に類似した同所性胸膜播種モデルとなる。テロメライシンの胸腔内投与により明らかな播種結節数の減少と腫瘍総重量の低下が観察された。細胞外マトリックスであるヘパラン硫酸を分解する酵素であるヘパラナーゼを発現する非増殖型アデノウイルスベクター(Ad-S/hep)をテロメライシンとともに胸腔内に投与することで、腫瘍個数と腫瘍重量のより顕著な抑制が確認された。また、テロメライシン単独に比較して併用群では、有意な生存期間の延長が認められた。さらに、H2452中皮腫細胞の三次元的スフェロイド培養を行い、培養液中にGFPを発現するテロメスキャンとAd-S/hepを投与し、一定時間後に共焦点蛍光顕微鏡下にGFP発現を観察した。テロメスキャン単独に比べて、Ad-S/hepを併用することでより深部へのウイルス浸透が認められた。これらの結果から、テロメスキャンおよびテロメライシンは、悪性胸膜中皮腫の診断・治療に有効であると考えられる。
|
Research Products
(4 results)