2008 Fiscal Year Annual Research Report
虚血耐性の内在性神経細胞保護作用における細胞内情報伝達系の解明
Project/Area Number |
19390375
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
木内 博之 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30241623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 正夫 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (70235886)
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Keywords | 虚血耐性現象 / 遅発性神経細胞死 / 神経細胞保護 / JAK-STAT pathway |
Research Abstract |
【目的】脳虚血耐性現象は、短時間の非致死的虚血負荷により、引き続く致死的脳虚血に対して強力な脳保護効果が誘導される内因性神経保護機構であり、脳梗塞治療の観点から注目されている。今回、心筋虚血後の細胞死の制御に関わる細胞内伝達機構であるJAK-STAT経路の脳虚血耐性現象への関与をラットの一過性前脳虚血モデルを使用して検討した。【方法】5分の致死的虚血群、3分の非致死的虚血群、虚血耐性群の各群で、虚血再灌流後、海馬CA1をサンプルとして摘出し、Western blotによりリン酸化STAT3ser727(pSTAT3)の発現と動態を検討した。免疫組織学的染色によりpSTAT3の海馬CA1における局在について検討した。さらに、STAT3阻害薬を脳室内から投与し、虚血耐性現象の脳保護効果に与える影響を検討した。【結果】致死的虚血負荷後早期に海馬CA1の神経細胞でpSTAT3の一過性発現の増幅がみられた。非致死的虚血負荷後には、再灌流後8時間以降にpSTAT3の発現が上昇し、2日目に発現のピークを認めた。STAT3阻害薬によりこの発現を抑制すると、虚血耐性による脳保護効果が減弱し、pSTAT3の発現増幅が虚血耐性の脳保護効果に関与していることが示唆された。【考察】これまでに、局所脳虚血において大脳皮質の神経細胞でpSTAT3(tyr705)の一過性発現増幅が神経細胞保護に関与していることが報告されているが、我々の結果は、一過性前脳虚血後の海馬CA1神経細胞においてSTAT3(ser727)の発現が増幅することを証明した点で新しい。さらに、非致死的虚血後のSTAT3の活性化が虚血耐性現象の脳保護効果に関与していることが示唆された結果はJAK-STAT pathwayが脳梗塞治療の新たなターゲットとなりうる点で重要な意義を持つと考えられた。
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