Research Abstract |
運動器細胞の三次元培養組織に対し,力学刺激負荷培養を行い,「力学刺激」のインプットが,「遺伝子発現,蛋白発現の変化」のアウトプットとして応答を結ぶ,細胞内伝達(メカノトランスダクション)の機序を明らかにする研究を以下の項目で実施した. 1)運動器細胞(軟骨,滑膜など)よりの三次元培養組織の作製および力学刺激応答の評価 2)力学刺激負荷による細胞骨格とメカノトランスダクションの解析 3)力学刺激強度の違いによる応答の変化の解析 結果(1)力学刺激負荷による運動器細胞のメカノトランスダクション 軟骨,滑膜,半月板など関節の運動器細胞の三次元培養組織を作成し,力学刺激を用いて,遺伝子発現(細胞外マトリックス,および,マトリックス分解酵素,転写因子,サイトカイン,など)とこれらの蛋白発現が変化する応答に,時間系列があった. (2)生理的力学刺激および,非生理的力学刺激による細胞内シグナルの解析 運動器細胞を用いて,生理的な力学刺激と非生理的な力学刺激(過負荷または低負荷)を与えると,細胞内骨格であるActin,Vimentinの再構成,再配列が起こり,これら細胞内骨格の変化が力学刺激でみられることを見いだした.この三次元力学刺激培養系が,定量的に組織の変形を伴う力学負荷をあたえ,負荷量により細胞応答が異なることが再現性よく評価できる有効な培養システムであることがわかった. 以上の結果は,変形性関節症を引き起こすと言われる肥満や下肢変形による力学的負荷による関節破壊の細胞生物学的メカニズムと,関節固定や寝たきりなど廃用性運動器機能不全の病態,細胞内メカニズムの解明に意義があり,これら疾患の予防,治療戦略を与えるうえで重要である.
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