Research Abstract |
【目的】中枢神経系の再生を目指した移植材料として神経幹細胞が注目されているが,臨床応用を考えた場含技術的・倫理的問題が障害となる可能性がある.そこで我々は,自家組織由来の細胞供給源としてニューロンやシュワン細胞へ分化する神経堤幹細胞に着目した.本研究では,神経堤細胞を標識するP0Cre/loxp EGFPマウスを用い,皮膚,後根神経節,骨髄より神経堤幹細胞を回収し,その特性の違いを比較検討し,さらに損傷脊髄に対する移植を行い、その効果を病理組織学的に検討した. 【方法】1.各組織由来神経提幹細胞の培養:FACSを用いて各組織におけるGFP陽性細胞の回収・培養を行った.2.各組織由来神経提幹細胞における分化能の検討:形成された細胞塊を分化誘導し,各組織間での分化傾向を比較検討した.3.遺伝子解析:RNAレベルでの神経堤マーカーの発現を検討した.4.神経堤細胞の移植:マウス第10胸髄レベルに圧挫損傷(60Kdye)を加え,損傷後9日目に各組織由来の神経堤幹細胞を移植し,組織学的評価を行った. 【結果】成体における皮膚,後根神経節,骨髄よりGFP陽性細胞回収すると神経堤由来の細胞塊が形成された.各細胞塊を一定の条件下で培養すると,その分化傾向や自己複製能、および遺伝子発現に相違があり,神経堤幹細胞における組織特異性が明らかとなった.移植した神経堤細胞は損傷脊髄内でニューロン,シュワン細胞,血管平滑筋へ分化していた. 【考察】神経堤幹細胞は胎生期に神経管より遊走し,成体に至るまで胚葉を超えて各組織に潜状しており,骨髄等において胚葉転換と表現されている組織幹細胞の多くが実は神経堤由来であることが示唆された.また移植された細胞は神経系細胞と血管平滑筋へと分化しており,脊髄損傷に対する神経堤幹細胞移植の可能性が示唆された.
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