2008 Fiscal Year Annual Research Report
アレルギー性鼻炎の制御に向けた新たな治療戦略の確立 -免役分子生物学的研究-
Project/Area Number |
19390434
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川内 秀之 Shimane University, 医学部, 教授 (50161279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 真吾 島根大学, 医学部, 講師 (60152667)
佐野 千晶 島根大学, 医学部, 講師 (70325059)
山田 高也 島根大学, 総合科学研究支援センター, 准教授 (50191317)
青井 典明 島根大学, 医学部, 助教 (80452556)
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Keywords | アレルギー性鼻炎 / Toll-like receptor / 経口免疫療法 / マスト細胞 / IL-15 |
Research Abstract |
(1)アレルギー性炎症における気道上皮細胞によるサイトカイン・ケモカイン産生機構を解明するため、健常者より採取した鼻粘膜細胞および気道粘膜上皮細胞のcell lineを用いて、細胞表面のToll-like receptoの発現をRT-PCR,ノーザンブロット、さらにフローサイトメトリーにて確認した。ノーザンブロット法にてヒトの単球の細胞株(U937)ではTLR2,TLR4,TLR6,TLR9いすれも発現していたが、気道粘膜上皮細胞の細胞株(CCL30,A549)では、LPS刺激で構成的にTLR2,TLR3,TLR6を発現してくるが、TLR4,TLR9については発現を認めなかった(PCR法では、気道粘膜上皮細胞株においてTLR2,TLR3,TLR4,TLR5,TLR6に特異的なmRNAの発現を認めた)。ヒト気道上皮細胞株(CCL30,A549)からのリポ蛋白刺激でのTLR2を介したIL-8やIL-15の産生の検討や.マウス骨髄由来の肥満細胞を用いてIgEの架橋による肥満細胞からの種々のサイトカイン産生について詳細な検討を行なつた。その結果、細胞内シグナル伝達経路の阻害剤のみならず、アレルギー治療薬であるH1受容体拮抗薬が、マウス骨髄細胞由来の肥満細胞からのTh2型のサイトカイン産生を臨床雨量で濃度依存的に抑制することを明らかにした。この系では、MAP kinase経路のうち、p-38とErkの経路を抑制していることが示唆された。またリポ蛋白刺激での気道上皮細胞からのIL-8の産生をオキサトミドが臨床用量で抑制し、マウスの急性鼻炎モデルでもIL-8の産生抑制を介して、炎症局所への好中球を中心とした細胞浸潤を制御していることが証明された。この系では1κBの燐酸化が抑えられNF-κBの活性化が抑制されていることをDNA binding assayにより明らかにした。 (2)アレルギー性鼻炎の治療法の一つとして抗原特異的免疫療法、特に舌下免疫療法が近年注目されている。舌下免疫療法は、従来の注射型による減感作療法と同等の治療効果が得られることが報告されているが、抗原の投与量が多く、安全性の面などで課題が残る。また、そのメカニズムに関しても未だ一定の見解は得られていない。そこで我々はマウスを用いてアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法モデルを確立し、その効果および作用メカニズムに関して検討した。卵白アルブミン(OVA)を水酸化アルミニウムゲルとともにマウスの腹腔内に投与して全身感作を行った後、OVAを反復点鼻投与してOVAに対するアレルギー性鼻炎モデルマウスを作製した。また、舌下免疫療法モデルの作製には、鎮静下でマウスの舌五粘膜へOVA溶液を滴下する方法を用いた。より詳細なメカニズム解明のため、舌下粘膜への抗原の投与時期をアレルギーの誘導相の前(感作前)、誘導相と反応相の間(感作後)、反応相の後(発症後)とに分けて検討した。最終点鼻後に血清を採取し、各種リンパ組織や鼻腔組織より細胞を単離して解析を行った。OVAの舌下免疫療法モデルにおいて、舌下免疫をアレルギーの誘導相の前(感作前)もしくは誘導相と反応相の間(感作後)に行った系では、PBSのみを舌下投与したコントロール群と比較してそれぞれ血清中の抗原特異的IgE値の有意な減少が認められたが、舌下免疫を反応相の後(発症後)に行った系では、OVA投与群とコントロール群との間にIgE値に有意な差は認められなかった。感作前OVA舌下投与群において、脾臓および頚部リンパ節由来のリンパ球からのTh2サイトカイン産生がコントロール群と比較して有意に抑制された。感作前OVA舌下投与群の頚部リンパ節において、CD4陽性CD25陽性制御性T細胞の数や頻度にはコントロール群と比較して有意な差を認めなかったが、Foxp3やIL-10のmRNAの有意な発現上昇が認められた。これらの結果から、アレルギー性鼻炎の舌下免疫療法において、頚部リンパ節における制御性T細胞や抑制性サイトカインがアレルギー反応の抑制に関与している可能性が示唆された。
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