2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19390443
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大黒 伸行 Osaka University, 医学系研究科, 准教授 (00303967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 俊一 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60263406)
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / 中空ナノ粒子 / リポソーム / 分子標的 / HIV-TAT / Peroxiredoxin6 |
Research Abstract |
(1)網膜神経節胞(RGC)の標的化 RGC特異的表面マーカーであるThy1分子を標的として、抗Thy1抗体をBNC表面に修飾したナノ粒子を(T-BNC)をラット硝子体中に投与しRGCへの取り込みを組織学的に検討したが、残念ながら現時点で1は粒子の取り込みを確認することはできなかった。そこで、細胞移行性を高めることが知られているHIV-TAT領域蛋白を使つたデリバリーシステムの開発を開始した。輸送する蛋白として、最近D. P. SinghらのグループよりRGC保護作用が報告されたPeroxiredoxin6(PDX6)を採用した。Singh教授に依頼してTAT-PDX6融合蛋白を作成してもらい、ラット硝子体中に投与したところ、蛋白は網膜全層に輸送されていることが確認された。次いで、視神経切断モデルを用いてこの融合蛋白のRGC保護作用を検討したところ、濃度依存的に著明な保護作用が確認された。 (2)血管内皮細胞の標的化 シアリルルイスX修飾リポソーム(S-Lipo)と抗マウスEーセレクチン抗体修飾リポソーム(E-Lipo)を実験的ぶどう膜炎(EAU)マウスに投与し、眼炎症部位の局在を組織学的に検討した。その結果、E-Lipoの方がS-Lipoよりも網膜血管への集積が著明であることが明らかとなった。次に、それぞれの粒子にステロイドを内包させEAUマウスに投与し、眼炎症クリニカルスコアの推移を検討した。驚いたことに、組織学的には集積が強いはずのE-Lipoでは消炎効果はほとんど認められなかつた。一方、S-Lipoでは十分な消炎効果が認められた。このことは、E-Lipoは抗原抗体結合で網膜血管には結合するが、組織中には取り込まれず、結果として消炎効果を示さないのではないかと推測された。一方、S-Lipoが網膜組織に拡散することはすでに我々が証明しており、今回認められた消炎効果はこれによるものと考えられる。以上より、網膜・脈絡膜全体に炎症が生じているような病態ではS-Lipoがデリバリーツールとして有効であり、血管のみに病巣がある病態(例えば血管閉塞症)では、E-Lipoが有用である可能性が示唆された。
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