Research Abstract |
脂肪由来幹細胞(ASC)に対する創傷関連因子の影響を調べ,なかでもbFGFによりJNKシグナルを介してASCからのHGF分泌およびHGFmRNA発現が強力に促進されること,ASCの増殖が促進されることを明らかにした。また,その作用は,bFGF刺激が1週間継続することにより加速度的に大きくなったことが明らかになるとともに,MAPKシグナルの中でもJNK阻害剤で最も特異的に阻害された。マウスを用いたVivoの脂肪虚血再還流障害モデルにおいても,障害後に脂肪組織の細胞外基質に貯蓄されていたbFGFが放出されるのにひきつづき,血管,脂肪組織のリモデリングとともに間質細胞からHGFが分泌されることが観察され,細胞の壊死,アポトーシスとともに,細胞増殖,とくにASCの細胞増殖が観察された。また,虚血再還流障害後の脂肪組織の線維化,瘢痕形成は,HGFの中和抗体により有意に促進され,さらにbFGF中和抗体,およびJNK阻害剤によっても有意に促進された。すなわち,ASCに分泌されたHGFにより線維化が阻害され,血管新生とともに脂肪再生にポジティブな作用をしていることが明らかとなった。本研究結果は目本再生医療学会,国際研究皮膚科学会で報告するとともに国際研究雑誌に投稿中であり,今後本研究結果に基づき,bFGFの徐放性ビーズを利用した線維化治療の前臨床研究を計画中である。対象とする疾患にはケロイド,肥厚性瘢痕,肝硬変などを想定している。
|