Research Abstract |
60歳以上の高齢者を対象に,2年間の追跡調査を行い,歯の欠損拡大とそれに関連する因子について検討を行った.対象者は,大阪府高齢者大学講座の受講者の中で2007年の調査に参加した60歳以上の275人のうち、2009年の追跡調査に応じた129人(男性56人,女性73人,平均年齢69.1才)とした.口腔内検査から,喪失歯とそれに関連する因子について分析を行った. 歯の喪失は,16%の者に認められ,約半数は最後方の残存歯であった.また、健全歯より修復歯が、前歯より臼歯が喪失しやすかった(p<0.05).アイヒナーB・C群の人で喪失者の割合が多かった. 以上の結果より、歯の喪失は,修復歯や臼歯で生じやすく,臼歯部の咬合支持を失うと,歯が喪失しやすいことが縦断研究において示唆された. さらに,65歳以上の自立した生活を送っている比較的健康な高齢者を対象に,5年間の追跡調査を行い,口腔関連QoLの変化を調査した.対象者は,大阪府老人大学講座の受講者の中で2004年の調査に参加した60歳以上の342人のうち,2009年の追跡調査に応じた108人(平均年齢70.1才)とした.口腔関連QoLの指標にはOral Heallh Impact Profile-14を用いた. その結果,口腔関連QoLは5年間で有意に低下し,特に5年前にQoLの高かった者で,その低下が著しかった.その一方で,口腔関連QoLの低下は,残存歯数の減少や咀嚼能率や咬合力,唾液分泌量の変化と有意な関連はみられなかった.したがって,高齢者の口腔関連QoLの低下には,他の要因も関与していることが示唆された.
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