Research Abstract |
栄養摂取の過剰や低下は,生活習慣病や老化の進行そのものに深く関わっているとされる.また,個人差は大きいものの,高齢者にみられる口腔機能の低下は食生活に大きく影響することが報告されている.今年度は,口腔機能のみならず,医学的および心理学的なアプローチを行うことで包括的調査を行っている.今回は,栄養調査に関して信頼性の高い評価法を用い,口腔機能と栄養摂取状態の実態調査を行った. 対象者は,住民基本台帳から無作為に抽出した兵庫県伊丹市在住の70歳の226名(男性109名・女性117名)とした.対象者に対して口腔内検診を行い,残存歯数やEichner分類による咬合支持などを記録した.栄養状態の検査方法としては,BDHQ (Briefself-administered Diet History Questionnaire)を用いた.BDHQは,質問票に記載された食品の過去1か月間の摂取頻度を記入することで,53品目の食品について1日あたりの詳細な摂取量と,タンパク質やカルシウムなどの97種類の栄養素が計算される.統計学的分析にはEichner分類による咬合支持と各栄養素の摂取量との関係について一元配置分散分析を行った. その結果,Eichner分類による各群において,男女ともに総摂取エネルギー量に有意な差は認められなかった.男性では,総摂取エネルギー量に対する緑黄色野菜,果実類,乳類,油脂類の占める割合がEichner分類によって差がみられた(表).摂取栄養素ではカリウム,カルシウム,リン,亜鉛,銅,αトコフェロール,ビタミンB,パントテン酸,ビタミンCがA群と比較してB,C群で有意に低かった.一方,女性では,摂取食品群および栄養素について,各群間での差は認められなかった.今後,他の口腔機能や心身状態との関連を調べ,口腔機能の低下による栄養摂取の変化が及ぼす全身への影響を明らかにして行きたい.
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