2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19401003
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
吉野 和子 Hosei University, 文学部, 教授 (00101329)
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Keywords | 移牧 / 社会体制の変革 / 土壌侵食 / 環境変化 / 国土保全 |
Research Abstract |
ルーマニアとブルガリアにおける1989年の社会主義体制の崩壊に伴って、羊の移牧がどのような変貌を遂げるのか、土地荒廃は進行するのか改善されるのか、をこれまで調査してきた。2007年1月のEU加盟後の羊の移牧はどのように変化を遂げているのか。移牧形式を維持できるのか、牧草地へのストレスは解消される方向にあるのかどうかを調査することを目的とした。 2007年までのルーマニアのカルパチア山地北麓では、畜産農家と役場での聞き取り結果は、羊は増加しつつあるとの結論であった。しかし、2008年の調査で初めて、聞き取りによる結果は必ずしも土地荒廃の進行状況と一致するものではないことが判明した。2008年に初めて、複数の農民が共産主義時代は公表する申告数以上の羊の移牧がおこなわれていたこと、1985年ころから土地荒廃が著しくなったことを語りはじめた。EU加盟2年後にして初めて、羊の実数に応じた補助金が得られること、正しく申告することの有用性が羊農家に浸透したことによって、聞き取りに対して答える羊の頭数が変わってきた。現在は準平原最上部まで移牧によって連れて行く羊は若羊に限られている。従って草地へのストレスが解消され、ムゴ松やモミ属の進入が始まっている。一方、二重移牧の冬の宿営地であるバナート平原では、定住化がおこり、羊が1,000頭を超える大規模農家が出現し、冬の宿営地に定住する農家が増加しつつある。 ブルガリアは完全共産化していた移牧が社会主義体制が崩壊した後、個人の羊の経営頭数は200頭以下となった。極めて小規模になり、EU加盟後数少ないチーズ工場への乳の搬入が難しくなり、今は羊の放牧をやめる農家が増えている。国境を越えて国外への肉用の羊の売買が中心である。EU加盟後100頭以下の羊農家にも補助金を出して羊の放牧を促している実態がわかった。
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Research Products
(5 results)