2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林再生援助事業の持続と村落組織に関する研究-フィリピンを事例に
Project/Area Number |
19401011
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
葉山 アツコ 久留米大学, 経済学部, 准教授 (30421324)
|
Keywords | フィリピン / 森林再生 / 村落組織 / 森林資源管理 / 自生組織 / 国家森林管理制度 / コミュニティ / 市場 |
Research Abstract |
フィリピンにおける国有林地・森林再生援助事業の多くは持続的な森林管理に結びついていない。これは、同国における森林管理主体が政府(伐採企業)から地域住民へと交代して20年以上が経過したにも関わらず、地域住民による森林管理は難しいと言うことでもある。同国の森林再生は、主に援助事業として推進されてきた。そのため、本研究は、外部によって作られた開発組織(本研究の場合は森林組合)の持続性は、それを根付かせるための仕組みが地域に存在するかどうかに依るとの仮説を立て、フィールド調査を行った。フィリピンにおける最も一般的な開発組織はグラミン銀行型の小規模金融組織であり、本研究の調査村(ミンダナオ島北ダバオ州の山村)においても、複数の民間金融機関によって形成された小規模住民組織が存在する。また、調査村には自生組織として葬式組合、結婚式組合の存在も確認できた。小規模金融組織、葬式・結婚式組合が持続的である一方で、森林組合は失敗に終わっていた。すなわち、森林組合の管理下にあったはずの人工林は政府から伐採許可を得てからわずか数年でほとんどが伐採されてしまった。人工林における木材生産管理を目的に外部によって作られた森林組合が持続できなかった理由は、組織を持続させるためのルール遵守の強制が住民内部からも外部からも働かなかったことにある。小規模金融組織の持続には民間金融機関によるルール遵守の強制が働いている。葬式組合の持続は、住民に葬式にかかる資金を相互扶助で確保する以外の方法がないため、ルール遵守せざるえない状況であることによる。両者ともルールを守らなければ連帯責任で、あるいは本人に不利益が生じる。森林組合は住民による資源管理の主体ということになっているが、実態は、国家森林管理制度の下請けという位置づけである。そのため、住民のみならず、政府機関、木材市場という各アクターがそれぞれの利益を最大化する動きをし、持続的資源管理のためのルール遵守の強制力を行使する存在が不在であった。森林組合という開発組織を持続させるための鍵は、住民側ではなく行政側にあると言える。今後の課題は、本年度に調査を終えることができなかった農産物生産と森林管理を組み合わせた組合(同島ブキドノン州の山村)の持続性に関する考察である。フィリピンにおける住民による森林管理の失敗に関しては、問題点を整理し、近く公表予定である。
|