2008 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・ビザンティン聖堂壁画の図像学的研究ーサラミナ島ファネロメニ修道院壁画修復
Project/Area Number |
19401014
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
木戸 雅子 Kyoritsu Women's University, 国際学部, 教授 (10204934)
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Keywords | 中世美術史 / ビザンティン美術史 / ポスト・ビザンティン美術史 / キリスト教図像 / 壁画修復 / 絵画技法史 / ギリシャ / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成19年度の事業計画で行ったサラミス島パナイア・ファネロメニ修道院聖堂壁画の修復を引き続き実施した。聖堂北側廊部分の壁面及び3つのクーポル、祭室天井部分までの修復を終了した(平成21年度に予定している祭室壁面の一部を除く)。同聖堂の規模は大きく図像主題も豊富であり、3年計画の当研究事業においては聖堂全体の約4分の1の修復が終わるにすぎない。しかし研究目的の一つであったギリシャの研究者と同等の立場で研究をするという研究体制が今回の修復事業の成功で実現した。文化財の修復事業の実施には多くの困難が伴われるが、ギリシャの考古局や研究者と非常に良い連携関係が築けたため、当初の予想よりも多くの成果を上げることができ、この関係が今後の両国の研究者の共同研究の新たな道を開くことができたのは意義深い。ポスト・ビザンティン時代の絵画史においてまだ体系的な研究が及んでいないペロポネソス、アッティカの画家集団の活動についての研究において、当聖堂の画家マルクとその周辺画家についての研究に今回の修復の成果が果たす役割は大きい。この洗浄により従来研究が遅れている18世紀のビザンティン絵画再興の時代の画家や壁画の実態について、画家の技法についても研究を進めることができる。これにより同時代のディオニシオス・エク・フルナによる絵画指南書『エルミニア』の記述と実際の壁画の比較も可能になった。ギリシャ人研究者もあまり注目していなかった同聖堂の修復の成果とその内容について共同研究のグループで3月にアテネ、ビザンティン美術館でシンポジウムを開催し同研究の成果、意義について多くの関心と理解をうることができた。
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Research Products
(4 results)