2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・ビザンティン聖堂壁画の図像学的研究-サラミナ島ファネロメニ修道院壁画修復
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19401014
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
木戸 雅子 Kyoritsu Women's University, 国際学部, 教授 (10204934)
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Keywords | 中世美術史 / ポスト・ビザンティン美術 / 壁画修復 / キリスト教図像学 / ギリシャ18世紀 / ビザンティン美術史 / 国際情報交換 / ギリシャ |
Research Abstract |
ポスト・ビザンティン時代の美術史はビザンティン時代と比較して体系的な研究が十分に進んでいるとはいえない。トルコ支配時代にあっても首都陥落以後一貫して多くの聖堂が建てられ、内部は図像で埋め尽くされている。昨年度までに18世紀の壁画図像を研究対象とし、アッティカ地方を代表するヨルゴス・マルコスとその弟子たちによる聖堂装飾、ペロポネソス半島北部のカカヴァス一家、イピロス地方、エビア島の諸聖堂などを調査した。本年はその成果をもとにセルビア、ブルガリアにも研究対象を広げ、いくつかの聖堂を調査した。それぞれ地域的条件は異なるものの、イピロス地方の移動する画家集団のような画家たちは、考えられている以上に広い範囲で活動していたのではないかという知見を得た。この点に関しては、今後地域ごとの調査とバルカン半島全体を視野にいれた総合的な研究が必要である。サラミナ島のパナイア・ファネロメニ修道院の聖堂壁画は、ディオニシオス・エク・フルナ著『エルミニア』の執筆時期とほぼ同じ時期に成立した壁画である。当時としては例外的に規模の大きな聖堂に膨大な数の主題の壁画で埋め尽くされており、本研究の研究目的における一つの聖堂装飾の全体像を明らかにするのに最適な研究対象である。その壁画の全貌を明らかにする必要から過去2年間で北側廊と祭壇部分の一部の洗浄と修復を終了した。現在それによって得られた写真資料、現場での観察に従い描き起こし図を制作し、各図像の内容について精密な研究を行っている。ここでの興味深い図像は詩篇に基つぐ「息するものはこぞって」を主題とする一連の図像である。この主題はポスト・ビザンティン独特のテーマであ図像の核をなすものとして、調査を行っだ各で聖堂の比較研究をこの図像を中心に進めている。
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