2007 Fiscal Year Annual Research Report
北メソポタミアにおける粘土板文書の探求-シリア、テル・タバンの歴史考古学的調査-
Project/Area Number |
19401032
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
沼本 宏俊 Kokushikan University, 体育学部, 教授 (40198560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 重郎 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (30323223)
新井 勇治 愛知産業大学, 造形学部, 准教授 (20410855)
西山 伸一 サイバー大学, 世界遺産学部, 准教授 (50392551)
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Keywords | 考古学 / アッシリア / 粘土板文書 / 楔形文字 / シリア / テル・タバン / メソポタミア / 中期アッシリア時代 |
Research Abstract |
本研究の主眼としているシリア、テル・タバン遺跡の発掘調査を、8月初旬から9月末まで実施した。今回の調査は、2005年度の調査で中期アッシリア時代の粘土板文書群が出土した日乾煉瓦造の王宮跡の詳細究明に焦点を置いた。王宮跡の主要施設はテルの中心部にあったとみられ、テルの西側斜面に東西6m、南北6mのトレンチを設定し発掘を行った。 上層からヘレニズム時代(紀元前後)(1層)、新アッシリア時代(前9〜7世紀)(2、3層)、中期アッシリア時代(前13〜11世紀)(4層)の層位を確認した。大きな発掘成果は、新・中期アッシリア時代の層の調査でもたらされた。1.新アッシリア時代:トレンチの東西南北に走る壁の幅約3m、残高約2.5mの巨大日乾煉瓦造建物跡の一部を検出した。壁の規模や排水施設を持っていたことから公的建物と考えられる。注目すべきは、この壁に使用された煉瓦の中からブロンズ製人物像が出土したことである。同像は定礎記念像であったと推測される。この建物跡の下層からは甕棺墓を発掘し、墓碑銘と考えられる楔形文字が刻まれた土器を発見した。2.中期アッシリア時代:王宮跡と一連の日乾煉瓦造の南北約4m以上、東西約4m以上の部屋の一部を検出した。部屋は2時期にわたり使用され、最初の床面からは径約1mの馬蹄形の土器窯を認めた。特筆すべきは、この窯の灰原層から円筒形碑文片が出土したことだ。碑文は解読の結果、97〜99年の調査で出土したタバンの王"アッシュール・ケタ・レシェル2世"の定礎記念碑文と同種のもので、前11世紀前半に年代付けられることがわかった。 上述の今年度の発掘調査での新アッシリア時代の公共的大日乾煉瓦造建物跡、定礎ブロンズ像、タバン初の同時代の文字資料の発見等の新事実は、タバンが古バビロニア時代、中期アッシリア時代のみならず、新アッシリア時代もシリア北東部の統轄拠点として君臨していたことを裏付ける大きな証拠を提示することができたと言える。 今年度の調査で発見した襖形文字資料は計52点で、その内訳は粘土板文書3点、煉瓦片39点、円筒形碑文片6点、土製鋲片2点、土器1点、装飾片1点であった。粘土板文書2点は古バビロニア時代、土器は新アッシリア時代、それ以外の資料は中期アッシリア時代のものであった。これらの文字資料の解読を山田と柴田が現地で行った。文字資料には、これまで出土した資料の欠落を補う多くの貴重な新情報が認められ、暗黒時代の解明に向けて大きな貢献が期待される。
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