2009 Fiscal Year Annual Research Report
北メソポタミアにおける粘土板文書の探究-シリア、テル・タバンの歴史考古学的調査-
Project/Area Number |
19401032
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
沼本 宏俊 Kokushikan University, 体育学部, 教授 (40198560)
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Keywords | 考古学 / アッシリア / 粘土板文書 / 楔形文字 / シリア / テル・タバン / メソポタミア / 中期アッシリア時代 |
Research Abstract |
本研究の主眼であるテル・タバン遺跡の発掘調査を8月初旬から9月末まで実施した。昨年度調査した北側地区の継続発掘と2005年以来継続しているテルの西側地区の発掘を行った。 北側地区では昨年度発掘した中期アッシリア時代の公共的巨大日乾煉瓦造壁跡(8b~9b層)の各時期の正確なプランや増改築等の全容究明のため、重複した壁を上層から一つずつ取り外す作業を行った。調査の結果、建築は8時期に細分されることが判明した。これらの壁に伴う生活面からはアッシリア帝国の拠点都市"タベトゥ"の王統を確立するうえで有効な多数の銘文入り煉瓦が出土した。 西側地区では2007年度に発掘したトレンチ15の東側斜面に南北10m、東西4mの拡張トレンチを設定し発掘を行った。上層からヘレニズム、新アッシリア、中期アッシリアの層序を確認した。中期アッシリア時代の層では2005年の調査で粘土板文書群が出土した日乾煉瓦造公共的建物跡(宮殿跡)と一連の建物跡の発掘を行い、新たな部屋の一部(南北1.8m、東西1.2m)を検出した。この部屋も同時代の創建期の主要施設で、最大の成果は粘土板文書群の塊(長さ約1.0m、幅約0.7m、厚さ3-5cm)がこの部屋の床面から出土したことである。この中には粘土板文書が少なくとも100点以上詰まっていると思われる。来年度の調査期間中に解体し清掃と解読を開始する。解読が進めば、これまで発掘された中期アッシリア文書にはない学会待望の新情報の提供が期待される。 本年度の調査では、計49点の楔形文字資料を採集した。これらの文字資料の解読を連携研究者の山田、柴田が現地にて実施した。これらの中で特筆すべきは前16世紀の養子縁組契約粘土板文書である。古バビロニア時代と中期アッシリア時代の間の空白を補う資料で、この文書の発見によりタバンが古バビロニア時代以降も統轄拠点として君臨したことを実証した点は、今回の調査の大きな成果である。
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