2008 Fiscal Year Annual Research Report
古代エジプト新王国第18王朝時代後期の岩窟墓の調査研究
Project/Area Number |
19401034
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近藤 二郎 Waseda University, 文学学術院, 教授 (70186849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 作治 早稲田大学, 理工学術院, 客員教授(非常勤扱い) (80201052)
菊地 敬夫 サイバー大学, 世界遺産学部, 准教授 (10367112)
柏木 裕之 サイバー大学, 世界遺産学部, 准教授 (60277762)
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Keywords | エジプト / 考古学 / 新王国 / 岩窟墓 / ウセルハト |
Research Abstract |
古代エジプト新王国時代に王都テーベ(古代名ウアセト)があったルクソール市西岸のアル=コーカ地区において昨年度に引き続き新王国第18王朝時代後期のアメンヘテプ3世治世の重要な岩窟墓であるウセルハト墓(テーベ岩窟墓第47号)の発掘およびクリーニング作業を実施した。ウセルハト墓は、20世紀初頭以降に、砂礫や生活廃棄物などの厚い堆積に覆われ、正確な墓のプランや壁面などに残存する壁画・碑文の状況などは、ごく僅かな記録や写真などからしか類推するしかなかった。2008年度の調査によって、ウセルハト墓の前庭部から前室に通じる入口開口部を含む正面外壁上部を検出することに成功した。岩窟墓入口上部には、中央にアメンヘテプ3世の即位名と誕生名を配し、向って右手には腰かけたアトゥム神とその背後に立つ西方の女神を礼拝するウセルハトの姿が、そして向って左手には日輪を戴く腰かけた姿勢をしたハヤブサ頭のラー・ホルアクティ神とその背後に立つマアト女神の姿が認められた。かつては左側部分にも神々を礼拝する被葬者ウセルハトの姿があったと思われるが、現在では破壊を受けて残存していない。幾つかの部分に破壊の痕跡はあるものの、発見されたレリーフはアメンヘテプ3世治世末期の特徴を持つ極めて水準の高いレリーフ装飾である。また、今回、検出された墓入口上部のリンテルの装飾図像は、アメンヘテプ4世初期のケルエフ墓(岩窟墓第192号)の装飾と酷似しており、当該時期の墓装飾を考える上で極めて重要な資料である。第18王朝時代後期の大型岩窟墓の比較調査も実施し多くの有力な知見を得ることができた。
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