2008 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン農漁民の資源利用と世帯戦略から見た貧困削減の可能性の研究
Project/Area Number |
19401039
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 Saitama University, 教養学部, 准教授 (60261872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 孝広 早稲田大学, 人間科学学術院, 客員講師 (50386653)
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Keywords | 資源利用 / 世帯生計戦略 / 社会的格差 / フィリピン / 貧困削減 |
Research Abstract |
経済が急成長する東南アジア諸国にあって、フィリピンは経済成長の度合いが他国に比べて特に鈍く、貧困の度合いも高い国である。フィリピンにおける貧困は、社会的経済的格差の大きさの裏返しでもあるが、本研究ではなぜ人々は貧困から抜け出せないのか、貧困を削減するにはどうしたらいのかを、統計データや、われわれが農村および漁村で実施して得られた現地の民族データから検討していこうというものである。 これらのデータの検討の結果、そこには、近代的な政治制度や資本主義経済が村落生活に入り込む一方、こうした状況に対して一般の人々が生活の論理に根ざしたリスク分散型生活戦略で臨むという現象が見られ、この近代制度の論理と生活の論理との簡の齟齬が結果的に貧困を再生産してしまっているというメカニズムが明らかになった。この点は、本来は人々を貧困から抜け出させるという役割を期待されている協同組合においても、その近代的システムが人々の生活戦略と齟齬を来たし、結果的に貧困を再生産してしまっている点に、特に皮肉な形で現れている。 しかしまたこの生活の論理は、過去数百年にわたりフィリピンの人々の社会生活を秩序付け、その生存を保証してきた論理でもあり、彼ら/彼女らの生活を近代的制度の型にはめることは非現実的である。それゆえ、貧困削減という目的のためにはこうした農漁民の生活戦略を十分に生かすシステムを構築する必要がある。そしてそのためには、近代以前の彼らの社会経済的システムと現代の彼ら/彼女らを取り巻く社会経済システムが、どのように接合可能なのかを検討する必要がある。
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Research Products
(2 results)