2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19402016
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 宏之 Waseda University, 法学学術院, 教授 (10376402)
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Keywords | オフショア / 信託法 / 信託の限界 / 信託類似制度 / 欧州統一信託法 |
Research Abstract |
本研究では、オフショア地域の金融センターを主な対象として、各地の信託法制の内容と歴史的背景・実務に関して調査研究を行い、「信託の変容と限界」に関する理論的枠組の構築を同時に企図してきた。 従来、信託の法的な最大の特徴は、受託者のコモン・ロー上の権限と受益者のエクイティ上の権限の分属にあるとされてきた。それゆえ、大陸法諸国は、そうした「コモン・ローとエクイティ上の権限の分属」といった法的構成が採れず、多くの欧州諸国では、それぞれ独自の「信託類似制度」が存在するものの、法制度としての"trust"そのものは存在できないと考えられてきた。しかしながら、近時、英米法系の信託に特有のそうした法的構成に拠らず、「分離された財産の独立性」という観念に信託の特徴を見出す考え方が、欧州における統一的な信託法理論を構成するうえで有力となってきている。 2010年1月から2月にかけて、マン島の実地調査およびロンドンにおける文献調査・研究ミーティングを行った。マン島では、Douglas Borough Council・Henry Bloom Noble Library等を訪問し、信託制度導入の沿革と歴史的背景、制度の概要、実務運用、等に関して調査を行った。ロンドンでは、マン島も含む本研究全体の取りまとめのための文献調査を、King's College London・London School of Economics等を中心に行った。さらに、研究協力者であるKing's College London教授で弁護士のPaul Matthews氏と、今後の研究の展開と取りまとめのためのミーティングを行った。また、2010年3月に行ったドイツ出張においても、マックス・プランク外国法・国際私法研究所等に滞在し、研究成果の取りまとめのための各法域の文献を収集とミーティングを行った。
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