2009 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおける社会階層の動態と社会経済変化―市民社会・共同性創出の可能性―
Project/Area Number |
19402024
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
西村 知 Kagoshima University, 法文学部, 教授 (20253388)
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Keywords | フィリピン / 社会経済変化 / 複数性 / 共同性 / 市民社会 |
Research Abstract |
本年度の主な研究内容は、単独による現地調査と文献調査および連携研究者との研究会である。まず、現地調査は、平成21年8月と平成22年3月にフィリピン共和国、タルラック州のルイシータサトウキビ農園における土地問題に関する継続調査をおこない、以下のことが確認された。2004年の地主へ雇用、賃上げを求めたストライキ、それに対する政府の発砲による死傷者を出した事件がきっかけとなり農業労働者が獲得した最高裁の決定である農地再配分は現在、地主側の一時差し止め請求のために実現していない。地主の豊富な資金を使った工作によって、労働者は耕作により農地有効利用の潜在能力を示すことが困難になっている。しかし、血縁、地縁を用いて一部の地域では、耕作が継続されている。主にグローバル化による農業労働者世帯の雇用、所得の複数化は、農園内の新しい共同性を生み出す過程にある。資料収集に関しては、英国のロンドン大学経済学部において経済制度と社会経済変化の関係に関する新しい知見、アプローチを得るための作業をおこなった。ホジソン博士の講演会も聴講し、制度を文化的、生物学的視角から研究する方法を学んだ。研究連携者との研究会においては、引き続き、フィリピン社会変化を学際的に研究する可能性を模索した。その結果、グローバル化による、ナショナル・ローカルの局面の現れ方、行為主体の複数性および共同性の創出の過程を研究することが重要であることがわかった。また、社会経済変化における、一部の社会構成員の包摂・排除の過程を考察することは社会の質的変化を理解するうえで重要であることも確認された。
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