2008 Fiscal Year Annual Research Report
英語化とアジアにおける社会編成-マレーシアの民間高等教育産業の展開と波及効果
Project/Area Number |
19402036
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
吉野 耕作 Sophia University, 総合人間科学部, 教授 (50192810)
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Keywords | 社会学 / グローバル化 / 高等教育 / 英語 / エスニシティ / 国際移動 / マレーシア / 留学生 |
Research Abstract |
本研究は、アジアの英語化におけるマレーシアの民間の高等教育の展開と波及効果を考察するものである。平成20年度は3つの課題を中心に調査・分析を進めた。第1に、マレーシアにおける民間の高等教育制度の成立・発展に関してブミプトラ政策下におけるエスニック関係の分析を掘り下げた。民間のカレッジが創設された1980年代に関する事業者による回想を、エスニック関係の資料収集および現地の研究者との議論を通して裏付けることができた。第2に、マレーシアの高等教育の英語化が留学生の国際移動経路に与える影響の継続調査を行った。特に、留学生をマレーシアに送り出しているイスラム国の事情を調査した。具体事例として、マレーシアを留学先として注目するようになったアジアのイスラム国家モルジブにおいて、マレーシア留学経験者、留学斡旋業者、奨学財団の理事長との聞き取りを通して、留学生の移動経路に影響を与える諸変数を同定することができた。第3に、マレーシアの多民族性・多言語性・多宗教性を資源としてイスラム圏市場で活躍するマレーシアの文化仲介者を対象に聞き取り調査・分析を行った。中国人・華人市場が対象の場合華人エスニシティが重要なのに対して、イスラム市場の場合は宗教と「人種」が資源として動員される点が浮上した。第4に、近年アジアの英語化をめぐる国際競争において重要性を増しているニュージーランドの役割を探索した。以上に加えて、アジアの英語化の本質を理解するために、対照事例として、英語圏の外に位置する日本の大学への留学経験者の社会的位置を探索するために、韓国において聞き取りを行った。その結果、本研究は国際移動・移住、トランスナショナリズム、エスニシティ、教育社会学などに貢献するのみならず、意味のある政策的提言が期待できる点を確信した。研究成果は、英語の論文1件、日本語の論文1件にまとめた。21年度中に出版予定である。
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