2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国における教育改革(素質教育)の進展と現職教育に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19402044
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
島森 哲男 Miyagi University of Education, 教育学部, 教授 (70125699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅子 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (60091774)
吉田 剛 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10431610)
市瀬 智紀 宮城教育大学, 附属国際理解教育研究センター, 准教授 (30282148)
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Keywords | 中国 / 教育改革 / 「素質教育」 / 現職教育 / 「総合学習」 / 「応試教育」 / 教育の格差 / 都市と農村 |
Research Abstract |
1. 現在の中国の素質教育の全体像を把握した 本研究課題のテーマである素質教育について、東北師範大学における調査、研究者からの聞き取り、および北京での文献調査により全体像の把握につとめた。1993年から提唱された素質教育は、1996年頃から具体的実践をともなって実施されたが、2001年あたりから、次第に理念的なものに昇華していった。一方で2001年からの基礎教育改革で教え方や学びにおいて素質教育が意図していたような変化があった。さらに、情報教育や伝統教育の重視、総合学習や英語といった項目が基礎教育に取り入れられていった。ただ、教育の発展が望まれている貧困農村の教育的課題と、保護者の期待が高い都市部の教育的課題は区別して論じられるべきである 2. 素質教育に関する具体的事例を収集した こうした義務教育改革の総体的な変化を踏まえた上で、平成20年11月に、吉林省農安県、公主嶺、遼寧省安山市での実地調査をおこなった。その結果、農村地域であっても教育のインフラが充実し、それが教育の質の向上に反映していること。素質教育が理念として了解されながら、すでにそれをテーマとする実践の段階ではなくなっていること。個別には職業教育や、情報教育、英語学習などが進んでいることを了解することができた。 3. 基礎教育改革・素質教育に関わる研究会を開催した。 中国と日本の双方で公開研究会を開催した。中国から日本に4名の研究者を招聘し、素質教育にかかわる公開研究会を行い、中国の義務教育改革、外国語教育の展開などについて討論を行った。 以上の研究結果から、中国の目指す「応試教育」からの脱却としての素質教育が成果をあげていること。それは基礎教育改革のなかで、教え方や生徒の学び方の変化として表れていることがわかった。しかし、本質的には大学入試制度に収斂される問題であり、自己矛盾を抱えた上で教育改革が進行していく構造は、日本を含む世界の諸地域に共通する構造である。
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