2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19403012
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 孝紀 Shinshu University, 理学部, 准教授 (00303446)
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Keywords | 地質学 / 層位・古生物学 / 古環境 / 古海洋 / 三畳紀 / 礁性石灰岩 |
Research Abstract |
ネパール・ヒマラヤのマナン地域およびマナン西方地域において,三畳系を対象に検討を行い,テチス海南部の海洋変動について解析を行った.現地において約3週間の調査を行い,砕屑岩・石灰岩の堆積相の記載と堆積環境の復元,地層の変形・褶曲の解析による構造地質学的検討を行った.その結果,次の事柄が明らかとなった. (1)マナン地域において,構造地質学的検討を行い,インド・ユーラシア大陸の衝突以前に形成された褶曲構造を見出した.この構造はゴンドワナ大陸北岸での大陸縁辺のテクトニクスを解析する上で重要な証拠となる. (2)三畳系下部から中部にかけてのほぼ完全な柱状図を作成し,コノドント・アンモナイト化石によって年代学的検討を行った.これによれば,この地域の三畳系基底はGriesbachian後期から始まり,はわずかに腕足類の破片を伴うミクライト質石灰岩を挟む黒色泥岩卓越層である.その上はアンモナイトに富む石灰岩と黒色泥岩の互層からなり,その時代はDienerianからSmithianに及ぶ.石灰岩の安定炭素同位体比の検討から,Griesbachianセクションでの約2‰(VS PDB)のマイナスシフトを検出した.この変動はこの時代のグローバルな同位体比変動とよい一致を示した. (3)上部三畳系Yak Kharka層に挟まれる石灰岩は六放サンゴ・石灰質海綿が卓越する,4層の礁性石灰岩からなる.これらの石灰岩体は砕屑岩類に囲まれており,波浪限界以浅の砕屑物の卓越する陸棚環境で形成された.当時の古地理学的位置は南半球中緯度帯の南部と考えられ,三畳紀後期の礁性石灰岩としては特異な位置に相当する.そのため,この地域が暖流の近傍などの位置するなどの良好な環境条件を反映していると考えられる.
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