2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19403012
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 孝紀 Shinshu University, 理学部, 准教授 (00303446)
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Keywords | 地質学 / 層位・古生物学 / 古環境 / 古海洋 / 三畳紀 / 大量絶滅 |
Research Abstract |
今年度の調査対象として,ネパールヒマラヤ中央部,ジョムソン東部地域において,補足調査を実施した.また,ネパールヒマラヤのジョムソン,マナン地域での3年間の調査検討のまとめとして,研究集会を開催した.その結果,次の事柄が明らかとなった. (1)アンモナイト・コノドント化石を用いた詳細な年代決定と露頭での岩相・生痕の観察によって,三畳紀最初期(後期Griesbachian-Dienerian)では,薄層のミクライト質石灰岩・砂質石灰岩を挟む黒色粘土岩/赤色ラテライト質粘土岩の細互層が発達することがわかった.この黒色粘土岩/赤色ラテライト質粘土岩細互層には葉理が発達し,大型生痕が認められない.化学分析によって,この黒色粘土岩では微量元素の濃集度が高く,赤色ラテライト質粘土岩では濃集度は低いことがわかった.従って,この地域は三畳紀初期にはやや深い陸棚域にあり,酸化・還元環境が断続的に繰り返す状況にあったと考えられる.しかし,酸化状況にあっても大型の底生生物の生痕が認められず,酸素濃度は低い状態に留まっていたと考えられる.この層準は炭酸塩岩安定炭素同位体比の負のシフトと重なり,炭素循環変動とこの地域の海洋環境変動が呼応している可能性を示す. (2)三畳紀初期の後半(Smithian-Spathian)では,大型生痕や生物擾乱構造が発達する石灰岩・泥岩が堆積する.泥岩類の化学組成では著しい微量元素の濃集は認められない.石灰岩の安定炭素同位体は明瞭な変動を示さない.Spathian-Anisianのセクションでは海洋環境は酸化的となり,大きな変動は記録されていない.この時期にまでに炭素循環変動は終息し,海洋環境も安定化したと推定される.
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