2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジア開発途上国におけるフッ素による地下水汚染のリスク評価と対策技術の開発
Project/Area Number |
19404013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 智 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (10206914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小熊 久美子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (00361527)
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Keywords | フッ素 / 地下水 / 健康リスク / 膜汚染 / シリカ |
Research Abstract |
タイのランプン地域の地下水は高濃度のフッ素を含有することが報告されており、我々のこれまでの調査でも最大16.1mg/Lのフッ素が検出されている。これまでの研究で、フッ素の起源には、この地域の存在する熱水が断層をとおって湧出するという説と、地層中に存在するフッ素含有鉱物に由来するという二つの説が提出されていた。事実、チェンマイ盆地の北部には温泉地帯が存在し、高濃度のフッ素を含有する地下水のいくつかは強アルカリかつ高温で、熱水が混合していることをうかがわせた。その一方で、高濃度フッ素が検出された地域の南部にはフッ化カルシウムの鉱床が存在し、蛍石などのフッ素含有鉱物も検出された。そこで、本年度の研究では、熱水中に高濃度のリチウムイオンが存在することを利用して、高濃度フッ素含有地下水中のリチウムイオン濃度を測定することにより、熱水の影響を調べた。その結果、温泉水中のリチウムイオン濃度は、約0.6mg/Lと高く、地下水中のリチウムイオン濃度は0から0.5mg/Lであった。地下水中のリチウムイオン濃度と、フッ素濃度との関係をプロットしたところ、リチウムイオン濃度が0.1mg/Lを超える地下水は、全てフッ素イオンが検出され、リチウムイオン濃度が高いほど、地下水中のフッ素濃度が高い傾向が見られた。しかしその一方で、リチウムイオンがほとんど検出されない地下水からも、最大12mg/Lのフッ素が検出された。これらの結果から、ランプン地域には広くフッ素含有鉱物が存在し、これらが地下水中のフッ素の原因となっているものの、ところによっては、熱水が混入している場合があることが裏付けられた。
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