2007 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸国を起源として分布する薬剤耐性マラリアの遺伝疫学研究
Project/Area Number |
19406013
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
狩野 繁之 Research Institute, International Medical Center of Japan, 適正技術開発移転研究部, 部長 (60233912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田村 俊秀 国立国際医療センター(研究所), 適正技術開発移転研究部, 室長 (80268846)
畑生 俊光 群馬大学, 医学部, 助教 (60344917)
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Keywords | 遺伝学 / 感染症 / ゲノム / 疫学 / マラリア / 国際研究者交流 / タイ:ベトナム:フィリピン:カンボジア |
Research Abstract |
平成19年度は研究実施計画に従い、1.フィリピン、2.ベトナム、3.タイのマラリア流行地の熱帯熱マラリア原虫集団の遺伝疫学解析を行った。 1.フィリピンの3つの流行地から採取された原虫92株を用いてmicrosatellite (MS) DNA 10座位の多型に基づく集団遺伝学的解析を行った。その結果、マラリア患者数が多い流行地の原虫集団は遺伝的多様度が高く、反対に患者数が少ない流行地の集団では遺伝的多様度が低い傾向が認められた。またフィリピンの3集団と他国の原虫集団の系統解析を行ったところ、上記3集団は互いによく分化していることが明らかとなったことから、同国では薬剤耐性等の遺伝的変異が、異なる地域の原虫集団には容易に拡散しない可能性が示唆された。 2.ベトナム南部で採取された原虫39株のクロロキン(CQ)耐性関連遺伝子の変異の有無と、その近傍のMS DNA 5座位の多型解析を行っている。また比較対象としてタイの原虫50株についても同様の解析を行っている。その結果、MS DNAのアレルの種類がベトナムとタイの原虫集団とで若干異なっていることから、タイで誕生したCQ耐性マラリアが近隣諸国へ拡散したとする定説に反し、ベトナム南部で独自に誕生した可能性、あるいは他の地域からベトナムへ拡散してきた可能性が示唆された。これは薬剤耐性マラリアの制圧を行う上で非常に重要な知見である。 3.タイのミャンマー国境付近で採取された原虫50株を、重症マラリア患者由来の25株と軽症マラリア患者由来の25株に分け、MS DNA 12座位の多型に基づく集団遺伝学的解析を行った。その結果、重症マラリア患者由来の原虫集団の方が、遺伝的多様度が若干低い傾向が見られた。さらに上記2集団の遺伝的分化度を調べるためF_<ST>値を求めたところ、0.014(P<0.05)と有意に分化していることが明らかとなった。以上の結果より、重症マラリアを引き起こす原虫株が存在する可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)