2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸国を起源として分布する薬剤耐性マラリアの遺伝疫学研究
Project/Area Number |
19406013
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
狩野 繁之 Research Institute, International Medical Center of Japan, 適正技術開発移転研究部, 部長 (60233912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田村 俊秀 国立国際医療センター(研究所), 適正技術開発移転研究部, 室長 (80268846)
畑生 俊光 群馬大学, 医学部, 助教 (60344917)
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Keywords | 遺伝学 / 感染症 / ゲノム / 疫学 / マラリア / 国際研究者交流 / タイ:ベトナム:フィリピン:カンボジア |
Research Abstract |
平成21年度は、具体的には以下において成果の論文・学会報告を行った。 1.アジアの薬剤耐性熱帯熱マラリア原虫集団の遺伝疫学解析 アジア(タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、フィリピン)に流行する熱帯熱マラリア原虫薬剤耐性責任遺伝子(pfcrt)の変異と、その近傍のマイクロサテライトを分子マーカとして、原虫集団の分子系統解析を行い、流行地域毎に原虫集団が遺伝的に大きく分化していることが解明できた。この成果からヒトの移動はあっても耐性原虫集団は容易には拡散しないことが示唆された。この成果は、アジアの耐性マラリアの拡散のメカニズムの定説を崩す結果となりうる。 2.三日熱マラリア原虫のミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析 ハプロタイプネットワーク法による韓国の三日熱マラリア原虫(Pv)の起源の推定を目的とした。方法としては、Pvのミトコンドリア(mt)ゲノムの全塩基配列(6Kb)を用いてネットワーク法により系統解析を行った。解析には韓国株11検体を含む患者分離株(計21検体)と、データベースに登録されている世界中の株(約280検体)を用いた。系統解析の結果、韓国のPv集団は、遺伝的に異なる2つの集団(A集団、B集団)に分かれ、同じく2つに分かれた中国南部のPv集団と、それぞれ同一クラスターを形成した。またデータベースに1検体のみ報告のあった北朝鮮株は、B集団のクラスターに含まれた。韓国と中国南部のA集団は、インドシナ半島(タイ)と南アジア(インド)のPv集団と近縁であった。一方、B集団は、インドネシアのPv集団から分化した可能性が示唆された。現在韓国で流行しているPvの起源は疫学状況から北朝鮮由来であると推定されているが、本解析の結果、真の起源は中国南部の2つのPv集団にあると推定された。本系統解析は、原虫の地理的起源を推定でき、患者の治療方針(薬剤耐性を含む)や流行拡散の把握に有用であると考えられた。
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Research Products
(7 results)