2009 Fiscal Year Annual Research Report
発展途上国における新興感染症に対する早期警戒システム構築のための基礎研究
Project/Area Number |
19406023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
押谷 仁 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 教授 (80419994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 陽 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (20443989)
神垣 太郎 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (80451524)
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Keywords | 感染症 / 公衆衛生 / ウイルス |
Research Abstract |
近年のグローバリゼーションは、感染症にも大きな影響を与えており重症急性呼吸器感染症(SARS)を例にとっても短期間で世界規模へ伝播が広がることが示された。すなわち感染症アウトブレイクの初期の兆候をすばやく検出する早期警戒システム(Early warning system)およびそれを受けた迅速な初期対応が感染拡大を防ぐために不可欠であるが、ほとんどの途上国でのサーベイランスでは早期警戒システムとして機能していないことが初期対応の大きな障害となっている。自然災害あるいは紛争による健康システムの破壊は感染症の流行を引き起こす重要な要因であると考えられる。とくに難民での麻疹のアウトブレイクを中心に文献研究を行ったところ、サーベイランスの構築と集団予防接種などの対策の連携が重要であることが明らかとなった。またフィリピンでは、2008年にレストンエボラウイルスの感染がブタで確認されたが、このウイルスのN蛋白を抗原として用いたIgG-ELISAの系を確立することで、農場における感染の浸淫度について検討を行うことが出来た。さらに同国でおこなわれている急性弛緩性麻痺サーベイランスにて探知されたポリオ以外のエンテロウイルスのうち3例はEV71であることを明らかとした。これらはいずれも従来のサーベイランスでは同定あるいは検出できなかったものに対して新しい検出方法によって同定しており、疫学像の把握とともにこの検出系の途上国における実現性についても検討を進める必要があると考えられた。以上から途上国における早期警戒システムとしての感染症サーベイランスが対策に果たす役割が自然災害や紛争による難民においても確認された。またそのシステム構築の際には、適切に病原体を検出するような検査系の確立が重要であると考えられた。
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