Research Abstract |
本研究は,理論計算機科学分野において中心的な難問とされている,計算量の下界を求める問題に対して,従来の組み合わせ論的アプローチに,大規模な数理計画問題を計算機実験を通じて解析するという新たなアプローチを組み合わせ,その解決を目指すものである。 今年度は,特に,各種の計算モデルにおける困難さの核ともいうべき組み合わせ論的構造を定性的に捉えることを目指し研究を行った。今年度の主な成果は以下の通りである。 1.回路計算量の下限を導出する問題に対して,これまで知られる最良の結果である入力変数の5倍を導出する証明手法が,本質的にタイトであることを,この証明手法が適用可能である論理関数でかつ,入力変数の5倍のサイズの回路で構成可能であるものを具体的に提示することにより示した。本結果は,国内研究会で発表し,更に,国際会議TAMC08において発表予定である。 2.項数や項の長さが制限された単調DNF式において,それを充足する割り当ての個数に対するタイトな上限および下限を極値組み合わせ論的手法を用いて明らかにした。本結果は,国際会議COCOON08において発表予定である。 3.量子状態の重ね合わせ理論を用いた回路モデルである,量子論理回路において,ある条件を満たす基本素子から実現できる任意の1キュービット量子回路は,基本素子の列に一意に分解できること,および,その具体的分解手法を与えた。本結果は,国内研究会で発表し,現在,多キュービット回路への拡張を目指し研究中である。
|