2009 Fiscal Year Annual Research Report
素子数と段数に基づく回路計算量の階層性の証明と自動設計システムの評価への応用
Project/Area Number |
19500014
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩本 宙造 広島大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (60274495)
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Keywords | 計算の複雑さ |
Research Abstract |
記憶領域や計算時間といった計算資源を,より多く用いれば,より難しい関数の計算や,より多くの言語の受理が可能になると考えられる.この性質を理論的に証明したものが,計算量クラスの階層定理である.本研究の第一の目的は,さまざまな理論計算機モデル上で,計算複雑さに基づいてクラスの階層性を証明することである.階層性を証明することにより,二つの計算量クラスを分離する関数の存在が示されたことになる.この関数は,計算に必要な資源量の削減が不可能であることが理論的に証明された真に難しい関数となる.当該年度に得られた研究成果は,以下のとおりである.(a)最も標準的な計算機モデルであるチューリング機械の計算能力は,記憶領域を,s(n)から(1+ε)(s(n+3)+n)に増やすことで,真に上昇することを証明した.この階層定理から,s(n)がnの多項式のときは,(1+ε)s(n)とs(n)の二つの領域計算量クラスの間に階層があることが分かる.また,s(n)=2^nのときは,(8+ε)s(n)とs(n)の間に階層がある.この成果は,電子情報通信学会の和文論文誌9月号に公表した.(b)領域計算量のクラスには,多項式領域量を指数関数的に繰り返し大きくすることで,PSPACE⊆EXPSPACE⊆2-EXPSTACE⊆…⊆k-EXPSPACE⊆…なる包含関係がある.本研究では,それぞれのクラスに所属する機械的な問題を人工的に作成できることを示した.この成果は,電子情報通信学会の英文論文誌11月号に公表した.
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