2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500015
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
山上 智幸 The University of Aizu, コンピュータ理工学部, 上級准教授 (80230324)
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Keywords | 量子暗号 / 量子計算 / 量子証明 / 量子状態 / 計算量 |
Research Abstract |
一般に、量子状態は量子力学の原理に基づく素粒子(光子など)で実現され、量子情報を内包している。量子計算は、こうした量子状態を変換し測定することで行われる。しかし、現在世界で研究が進められている量子計算機の計算能力については、未だ不明な部分が多い。特に、幾つかの量子状態を識別することは、量子計算にとって欠かせない作業の一つであるが、古典情報とは異なり、2つ以上の量子状態を区別することは一般に困難である。この識別作業の困難さを明らかにし、ある種の近似手法が効率的に行われることを示した。 量子通信の安全性(セキュリティ)を保証するためには量子暗号の開発が必要不可欠である。量子暗号を用いた量子通信(BB84など)はその実用性が既に検証され、その実用化が近づいている。量子暗号の基本構成要素の一つである量子対話証明系は、「証明者」と「評価者」との二者間量子通信を行う暗号系である。評価者の役割は証明者の与える証明が正しいか間違っているのかを(量子通信を使った)会話を通して判定を下すことである。この研究では、計算能力の高い証明者に対し、評価者は計算資源が限られた量子計算機を用いる場合を想定している。この様な制限の中でも特に、僅かなメモリ容量しか持たない量子計算機を用いた量子証明系を取り扱い、その証明系が認識できる言語の複雑さが、証明者がいない場合と比べ、飛躍的に増大することを発見した。こうした量子証明系の研究結果は、今後の量子暗号系の設計に多大な影響を与えるとともに、更に新しい量子暗号の提案に繋がる。
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