2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500015
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山上 智幸 University of Fukui, 大学院・工学研究科, 教授 (80230324)
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Keywords | 量子計算 / 量子オートマトン / アドバイス / 量子暗号 / 計算量理論 |
Research Abstract |
量子力学を基礎とする量子暗号の提案から20年を経て、漸く「量子鍵配送」と呼ばれる量子暗号が実用化されつつある。しかし、量子対話知識証明暗号を始めとするより複雑な量子暗号系の実用化には、その量子計算を支える柱となる量子計算機の実現が必要不可欠である。2009年度の研究では、そうした量子計算機に焦点を合わせ、その優れた性能とまたその計算能力の限界を示した。 量子暗号の実用性を考慮した上で、理論的な基礎として一般的な多項式時間計算モデルから離れ、現在の量子情報技術でも実現がより可能な量子計算モデルの一つである「量子オートマトン」を用いた。更に、このモデルに「アドバイス」と呼ばれるコンパクトな外部情報を付与した場合、モデルの計算能力がどの程度向上するかの解析を、同様なアドバイス付きの古典計算モデルとの比較を通して行った。ここでのアドバイスの与え方は、2004年に只木-山上-LINが提案した方式を採用した。アドバイスの種類の中でも特に、決定性アドバイス、確率的アドバイス、また量子アドバイスを用い、それらの能力の違いを分析することで計算量的な限界を示した。古典計算モデルでは、既に知られている決定性アドバイスの結果を拡張し、また確率的アドバイスの能力の限界をゲーム理論的な手法で証明した。これに対し量子計算では新しい解析方法を駆使し、決定性アドバイスの能力の上限を与えた。古典計算モデルとは異なり、量子計算モデルには量子アドバイスを付与することが可能である。この量子アドバイスの限界については、量子情報理論を用いた手法を用いない初等的な証明を与えた。
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