2008 Fiscal Year Annual Research Report
脳の時系列学習における対称および非対称STDP学習ルールの役割
Project/Area Number |
19500126
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 初男 Kyushu Institute of Technology, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (00108664)
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Keywords | 嗅内皮質 / 神経回路網モデル / 時系列学習 / 海馬歯状回 / 顆粒細胞モデル / シナプス間競合 / STDP学習ルール / LTDウインドウ |
Research Abstract |
1.ループ回路を有する嗅内皮質神経回路網の位相コーディング 昨年度の研究成果に加え、本年度は、非対称と対称のSTDP学習ルールを用いて時系列学習の過程を詳しく調べ、ルールの正のスパイクタイミング領域にあるLTDウインドウが時系列学習の進行に伴って背景雑音による偽学習を消去する機構(雑音に対するロバスト性)を明らかにした。 2.嗅内皮質→歯状回シナプスの学習ルールと感覚情報統合:異なる感覚モダリティの連合学習 昨年度、歯状回顆粒細胞の近位と遠位のシナプスに周期信号とランダム信号を加えたとき、最終的に遠位シナプスは強化されず近位シナプスだけが強化されることを見出した。これは匂いなどの非空間情報で強い印象を受けた場所情報の経路が選択的に強化される機構として興味深い。今年度はその神経機構を明らかにした。まず、これらのシナプスと細胞体との距離の違いによりスパイク潜時がスパイクタイミングに関して非対称になっていることが大きな原因であることを突き止めた。また、STDP学習ルールのLTDとLTPウインドウの面積比(LTD/LTP)が1より大きければ上記の現象が安定に生じることを明らかにした。さらに、抑制性介在ニューロンMOPP細胞とバスケット細胞のモデルを作りフィードフォワードとフィードバックの抑制回路を構成すると、顆粒細胞の発火周波数を抑えることができ、高周波入力に対する遠位シナプスの過度の抑圧を防ぐのに有効であることが分かった。 3.海馬CA3→CA1シナプスの学習ルールと時系列学習:モデル構築 研究計画に従って、15個のコンパートメントから成る海馬CA1錐体細胞の精密なコンダクタンスベースモデルを構築し、このニューロンモデルを用いたCA3-CA1神経回路モデルを構築した。このモデルを用い、平成21年度に場所と時系列の同時学習の機構を明らかにする。
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