2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳の時系列学習における対称および非対称STDP学習ルールの役割
Project/Area Number |
19500126
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 初男 Kyushu Institute of Technology, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (00108664)
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Keywords | 嗅内皮質 / 神経回路網モデル / 時系列学習 / 海馬歯状回 / 顆粒細胞モデル / シナプス間競合 / STDP学習ルール |
Research Abstract |
1. 嗅内皮質→歯状回シナプスの学習ルールと感覚情報統合:異なるモダリティの連合学習 昨年度までに、樹状突起を有する歯状回顆粒細胞モデルを用い、内側貫通路(MPP)と外側貫通路(LPP)にそれぞれシータ周波数の周期パルス列とランダムパルス列を加えると、シナプス競合の結果、最終的にMPPシナプスだけが強化されることを明らかにした。解剖学的には、歯状回分子層における貫通路線維層の厚みは、歯状回上刃ではLPP線維層がMPP線維層より厚く、下刃では逆である。そこで今年度は、それらのシナプス結合強度の初期値がシナプス競合に及ぼす影響を調べた。その結果、MPPシナプス結合強度の初期値がLPPシナプスのそれと等しいかあるいは大きければMPPシナプスだけが強化され、LPPシナプスの結合強度の初期値がMPPシナプスのそれより十分大きければLPPシナプス結合だけが強化されることが分かった。すなわち、歯状回上刃ではLPPシナプスだけが強化され、下刃では逆にMPPシナプスだけが強化されることを意味する。この結果は、空間情報と非空間情報が収束する歯状回が、非空間的な付加価値のある空間情報を選択し、選択された情報のそれぞれに対してゲートを開く機能を持っていることを強く示唆している。 2. 海馬CA3→CA1シナプスの学習ルールと時系列学習:各場所の学習とそれらの時系列学習 3年前に立案した本研究計画では、シータ周期でニューロン活動の放射状伝搬を起こすCA3神経回路網モデルを用いて、場所の時系列をCA3-CA1シナプスで学習させることにしていた。しかし、昨年5月に、海馬のシータリズムは中隔側から側頭側へ一方向に伝搬していることがNature誌で報告されたため、我々のCA3神経回路網モデルの修正が必要となった。この修正を試みた結果、抑制性介在ニューロンの軸索の広がりが異方的になると、ニューロン活動の一方向伝搬が生じることが明らかになった。また、昨年度構築したCA1錐体細胞モデルの近位と遠位の樹状突起にシャファー側枝シナプスを付け、尖端部に貫通路シナプスを付けて、それらのシナプス間競合について調べた。その結果、入力が少し遅れるシナプスが強化されることが分かった。これらのシナプス競合とCA3の一方向伝搬を用いると、歯状回で選択された場所情報に基づいて、CA3→CA1シナプスで場所の時系列学習ができると考えられる。
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