2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500176
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
成瀬 継太郎 The University of Aizu, コンピュータ理工学部, 准教授 (10301938)
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Keywords | ヒューマン・ダイナミクス / ヒューマン・モデリング / ウェブ / 社会ネットワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は,ウェブにおけるメッセージのやり取りの中での社会的なヒューマン・ダイナミクスを解明することである.この目的に対して,個人間の相互作用モデルを構築し,その本質的な特徴を数学的な解析と数値計算によるシミュレーションの両面から明らかにし,さらに現実のウェブ掲示板のデータと比較することにより,その妥当性を検証した.以下,その結果を述べる. まず前提として,ウェブ空間上の各個人は掲示板ヘメッセージを書き込み,それを読んだ他者がそれに関連した別のメッセージを書くという形で他者と相互作用すると仮定する.このとき,テーマや集団,各個人に応じて,あるメッセージがどれほど他者へ影響するか,そして各個人はどれほど気安くメッセージの書き込みを行うか,などの個人差が存在する.本研究では,そのような社会的特徴をランダムネットワークとして表現した数理モデルを構築した.この数理モデルを用いて様々な条件下でシミュレーションを行い,実際の社会データを比較することによって以下のことが明らかになった. 1.大部分の実データにおいて集団の内部で極端にメッセージ数の多い個人が観察されるが,それは社会的相互作用に起因する本質的なものである. 2.個人差は,集団の特徴にはそれほど大きな影響を与えない. 3.実社会の現象をこのモデルで説明すると実社会の集団は2層構造になっていると考えられ,積極的にメッセージを書き込むグループと,何があってもメッセージを書き込まないグループから構成されると推測される. このように,本研究では,一見すると自発的な動機により行われているメッセージの相互作用が,マクロ的に見るとある法則に従っており,我々が日常的に観測される社会現象はその必然的な結果であることが示された.
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