Research Abstract |
(1)「身体制御」に関しては,高等動物の筋肉による運動制御は該当する脳の運動野の神経細胞数に鑑みるに何桁も異なる大冗長度を有した制御である。その意味と機構はいまだに明らかではないが,発見論的アイデアのもと,神経回路網に埋め込んだ少数個のアトラクターに典型的な身体運動を対応させたcodingを採用し,更にそこにカオスを導入する。それにより複雑な身体運動を発生させそれを適応的に制御を行い,カオスの機能的関与を具体的に示すことを通じてその身体制御メカニズム解明に一石を投じ,機能シミュレーションによる工学的再現を目指すものである。 (2)「カオス搭載ロボットによる迷路求解の実現」に関しては,二輪自走ロボットに対して実際に迷路を設定し,機能シミュレーションに基づくカオス制御機構を組み込み,ハードウェア実装を行った遍歴ロボットを試作して迷路求解を行わせることを目指す。該当二輪自走ロボットのCPUは神経回路網を搭載できる性能規模ではないため,電磁波による信号の転送・受信を介してパソコン上にある神経回路網におけるカオスを用いて制御する試作機とする。更には高額の二足歩行ロボットを導入してその着CPUに直接神経回路網を擬似的に搭載して実験機を試作することも計画には含めてある。 (3)「光電子デバイスによる神経回路網の試作」に関しては,半導体技術を駆使して「量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)」を用いた能動双安定素子を作製し,それを二段に組み合わせて神経発火状のパルス発振をする素子を二次元上に集積的に配置し神経回路網の動作をさせるチップを試作しようとするものである。理論的な評価によるとこの素子の動作は生体的神経の3桁ほど速いパルス発振となっており,実際に神経回路網的動作を行うと,機能的に同等かつ人間や高等動物の1000倍ほど早い高度かつ高速処理ができると期待される(T.Yamamoto, Y.Ohkawa, T.Kitamoto, T.Nagaya and S.Nara, Int.J.of Bif.and Chaos に掲載決定済み)。申請者と実験的研究者との過去の共同研究歴では単一素子による多安定動作までは実現している(Y.Tokuda, Y.Abe, S.Nara and N.Tsukada, Applied Physics Letter, vol.63(1993), pp.2609-2611, S.Nara, Y.Tokuda, Y.Abe, M.Yasukawa and N.Tsukada, Journal of Applied Physics, vol.75, No.8, pp.3749-3755(1994))。しかしながら,これを集積させた素子結合系を作製しようとした場合は高額の費用がかかると思われ,本研究期間においては集積化は将来の課題とし,少数個の結合素子作製費用計上とその評価による動作確認とデータ解析研究を目指すものである。
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