Research Abstract |
生物のような環境適応行動を人工物にもさせようとするパラダイムは,1948年ウィナーのサイバネティクスに始まったとも言える.これを継承してきた分野は1990年代に“人工生命"と呼ばれ盛んに脚光を浴びたが,21世紀を待たずして衰退してしまった.これを研究代表者は,当時,人工生命を支える自律化技術が未熟で,ホメオスタシスをシステム内に創発させるに至らなかったためではないかと分析している.それゆえ,現在の最重要課題はこの自律化技術であるとの認識のもと,本研究では,人工物に搭載される人工脳を構築するための基盤技術を構築する.すなわち,進化型人工神経回路網の理論を大きく飛躍させ,その実現へ向けたマイルストーンを発見するために,(1)人工神経回路網の大規模構造進化のための方法論の構築,および,(2)人工進化に十分な計算機資源を供給可能にするための進化ロボティクス用計算グリッドの広域化・大規模化を目的とした. 研究の実施成果として次に示す事柄を得た.(1)十分な進化計算量を与えると,構造進化型人工神経回路網は,従来よく用いられてきたFF型人工神経回路網よりも,明らかに高い汎化能力を示すことができることが分かった.特に,難易度を調整しやすいマルチロボットシステムによる協調荷押し問題では,進化可能性が増大した構造が獲得される結果,自律的機能分化の発現が容易になり,提案手法が人工脳構築モデルとして相応しいことを検証できた.また,実機ロボットによる実験にも成功した.(2)ER用計算グリッド・システムを広域な大規模グリッドに対応可能なように改良した.そして,同期待ち時間が必ず生じる隔世代モデルに加え連続世代モデルも取り扱える新しいタスクスケジューリング法を導入した新システムを構築し,その有効性を検証した.
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