Research Abstract |
本研究の目的は,経営学の組織論と人的資源管理の理論を活用しながら,日米の公共図書館における専門的職務と非専門的職務の区分について分析・考察し,日本の公共図書館における新しい職員制度のあり方(職務分担のあり方)を解明し,図書館職員の人材モデルを提示することである。本年度の研究では,前年度に収集したサンタモニカ公共図書館(略称SMPL)のデータを用いて,SMPL中央館の旧館(1965年開館)と新館(2006年開館)のサービス内容,職員構成,職員の職務内容,等の変遷を分析・考察した。その結果,SMPLは,(1)旧館では,1階正面入口に貸出,返却,レファレンスの3デスクを個別に設置し,専門的職務と非専門的職務を区分した上で,各デスクに担当職員を配置していたこと,(2)新館では,1階に貸出・返却デスクと情報案内デスクを置き,2階にレファレンスデスクを設置したこと,(3)貸出・返却デスクに自動貸出機やその操作補助のボランティアを導入し,情報案内デスクに軽微な質問に対応する準専門職を配置することによって,専門職が専門的職務に専念できる体制を整え,人件費の抑制も図っていること,等が明らかになった。研究を進める過程で,日米の公共図書館における職務区分の理由・要因を解明するには,経営学の組織論と人的資源管理の理論の考察だけでは不十分であることが明らかになった。そこで,日米の行政学,地方自治,公務員制度に関する文献(図書,雑誌記事,等)を新たに幅広く収集し,専門的職務と非専門的職務の区分の観点から分析を進めた。今後は,日米の経営学,行政学,地方自治,公務員制度を踏まえた上で,日本の公共図書館における職務分担のあり方を分析・考察し,図書館職員の人材モデルを検討する。
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