Research Abstract |
電子民主主義は,社会情報学が電子資本主義のつぎに取り組まなければならない重要なテーマである。この研究における重要な鍵は,「決定と討議と情報」にかかわる情報通信技術(Information and Communication Technology:以下,ICT)を活用した民主的技術を,民主的意思決定の規範理論に準拠しつつ,異なる政治文化における現実の民主主義を踏まえて開発することである。 本研究の目的は,この主張を具体的に展開することにある。すなわち,「決定を最終的な目的」として捉え,「決定のための討議」,「討議のための情報」という形で3要素を論理的に関連づけながら,「決定と討議と情報」にかかわるICTを活用した支援システムを,民主的意思決定の規範理論に準拠しつつ,異なる政治文化の実証的な裏付けのもとに開発し,実験的に評価し,それらを総合して電子民主主義の段階的発展モデルを構築することにある。 具体的には,次の5つの問題を解決することにある。 【問題1】集合的判断形成論については,推論的ジレンマ(discursive dilemma)の発生メカニズムを理論的に解明し,ジレンマを回避することのできる集合的判断形成のための討議と投票のプロセスを概念的に設計する。その現実妥当性を検討し,実践に耐えられるプロセスを設計する。 【問題2】新たなコミュニケーション・ツールとして注目されてきている地域SNS(Social Network Service)を,フリーソフトをカスタマイズしてインプリメントする。その地域SNSが参加者の間での情報交換や討議を有意味にするために必要な信頼関係を生み出すための条件を解明する。 【問題3】問題2の条件を満たす地域SNSの上に,問題1のプロセスを組み込むことにより,集合的判断形成のための2階建モデルを概念的に設計し,実際のシステムを構築する。 【問題4】構築した集合的判断形成のための2階建モデルにもとづく支援システムを開発し,実験的に評価することにより,その性能と問題点を解明する。 【問題5】問題1~4を踏まえて,電子民主主義の集合的判断形成モデルを構築する。
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